就職活動、2015年卒は「採用競争が一段と激しくなる」見通し――リクルートキャリア制度変更で採用担当者に焦り?

» 2014年03月13日 13時30分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]

 採用人数はなんとか確保したが、クオリティはやや不満――。2014年卒の新卒採用状況をリクルートキャリアが調査したところ、こんな大企業の声が浮かび上がってきた。

 リクルートキャリアの就職みらい研究所は3月12日、2014年卒における企業の新卒採用活動や学生の就職活動の実態を調査した「就職白書2014」を公開した。2014年卒の内定取得状況(2013年12月時点)は79.7%と、前年比で4.2ポイント向上したという。

採用人数は確保できたが、質は不満?

 企業の採用計画に対する採用数は、2013年12月時点で「計画通り」「計画より若干多い」「計画よりかなり多い」と答えた企業が合わせて58.9%と、2013年卒より3.4ポイント減少した。企業規模別に見ると、従業員数が5000人を超える大企業においては、計画通り人数を採用できた割合は67.7%と、2013年よりも3ポイント高まっている。

photo 2014年卒における企業の採用計画に対する新卒採用数について(出典:リクルートキャリア)

 その一方で、入社予定者への満足度については、「非常に満足」または「どちらかというと満足」と答えた企業が67.4%と、2013年度よりも1.8ポイント減少した。入社予定者の満足度は2年連続で下降傾向にあるという。特に従業員数が5000人を超える大企業においては、満足度が2013年よりも8.1ポイント低い71.0%にとどまった。

photo 2014年卒における入社予定者への満足度(出典:リクルートキャリア)

 採用数が計画よりも少なかった企業に理由を聞いたところ、60.4%が学生が求めるレベルに達していなかったと答えたことからも、「質には不満が残る」(就職みらい研究所所長 岡崎仁美氏)と考える企業が増えていることがうかがえる。

企業選びの決め手は「業種」から「人」へ

 学生が企業を選ぶ視点にも変化が起きている。内定を2社以上もらった学生が、入社する会社を選ぶために最も重視した条件は、2013年卒では「業種」が1位(20.0%)だったのに対し、2014年卒では「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」が1位(16.6%)となった。

photo 入社予定企業と内定を辞退した企業を比較するときに最も重視した条件(出典:リクルートキャリア)

 就活生全体で見ても、企業を選ぶときに最も重視した条件について「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」は、就活開始時(5.2%)と2013年12月時点(12.6%)で比較したときに、最も伸びる項目となっている。

photo 企業を選ぶときに最も重視した条件。「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」は、時期が経つにつれて大きくポイントが伸びる項目だ(出典:リクルートキャリア)

2015年卒は採用担当が“失敗できない”年に

 こうした状況下で、2015年卒の就職活動はどうなるのだろうか。就職みらい研究所所長の岡崎仁美氏は、2015年卒については「採用競争が一段と激しさを増すのでは」と予想している。

 2015年卒の採用活動について、2014年卒に比べて「スタートを早める」と答えた企業は26.6%と前年より3.9ポイント増加している。スタートを早めると答えた企業320社のうち75.3%は、その理由を「より優秀な人材の確保」と答えた。

photo 2015年卒の採用活動を、2014年卒に比べて「スタートを早める」と答えた企業は26.6%にのぼった(出典:リクルートキャリア)
photo 就職みらい研究所所長の岡崎仁美氏

 この結果について岡崎氏は、「2016年卒の採用は、選考スケジュールを従来よりも4カ月遅らせ、広報開始を4年生の3月、選考開始を4年生の8月とするよう、経団連が指針を出した。2016年卒の採用活動が不透明な状況である以上、2015年卒で失敗するわけにはいかない、と考えている採用担当者は多い。インターンやリクルーターといった、企業のアクティビティが増え、採用競争は激化するのではないかとみている」とコメントした。

 インターンシップの実施状況についても、2013年度は43.5%と2012年度よりも4.5ポイント増加しているが、2016年卒からの指針変更を受けて、「夏期インターンを実施しにくくなると考えている採用担当者は多い」(岡崎氏)という。採用競争が激化する背景には、制度変更による採用担当者の焦りがあるようだ。

 本調査は郵便、およびインターネットによる調査で、2014年卒の新卒採用活動を行った1332社および、1610人の学生(大学4年生および大学院2年生)が回答した。調査期間は2013年12月11日から2014年1月31日まで。

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