JR東日本は2月19日、「新幹線・特急列車へ医師支援用具を搭載します」と発表した。列車内で急病人が発生した場合に、乗り合わせた医師に救援を依頼する。いわゆる「ドクターコール」だ。その医師に対して、患者の病状判断と処置方針の切り分けを支援するため、7つ道具を搭載するという。搭載される「医師支援用具」は、聴診器、血圧計、ペンライト、舌圧子(ぜつあつし)、アルコールシート、簡易手袋、パルスオキシメーターだ。
舌圧子は喉の奥を観察するために舌を押さえる器具。パルスオキシメーターとは、指先などに当てて脈拍数と血液中の酸素濃度を測定する道具とのこと。心肺機能が正常か否かを判断できるという。喘息持ちの私は通院するたびに指先にセンサーを挟まれて、血中酸素濃度を測定される。たぶんあのような機械だろう。パルスオキシメーターは、後段で紹介する日経メディカルの医師へのアンケートの中で「ドクターコールの時にあったらよかったと思う器具」に挙げられている。高価な機械だと思うが、JR東日本は医師のニーズをリサーチして選定したようだ。
JR東日本に問い合わせたところ、2012年度に新幹線列車内で発生したドクターコールの回数は118件だったという。3日に1度くらいの頻度で、意外と多い。このうち、実際に医師が応じてくれた事例は23件だった。これは118件という数字に対して意外に少ないと感じた。しかし、「急病人が発生した時に、たまたま医師が乗り合わせる」なんて奇跡に近いと思い直した。23件は奇跡の件数としては多い。
ちなみに医師が乗り合わせなかった場合はどうなるのか。JR東日本によれば、規則は決めておらず、現場の判断で最善を尽くすとのこと。ドクターコールといえども、新幹線車両に用意された多目的室で安静にすれば回復するという事例も多いそうだ。それでも車掌の判断で進行方向の直近の駅に連絡し、臨時停車させて救急隊に引き継ぐ事例もあるという。
いずれにせよ、これらの処置で急病人が助かればめでたしめでたし。美談に数えられる。しかし、そうもいかない現実もある。
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