「アンネの日記」事件と「従軍慰安婦」のビミョーな関係窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2014年03月18日 07時40分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

あまりに絶妙なタイミング

 世の中いろんな考えの人がいるので、そこまでは分かる。ただ、「本を破る」という行動がどうにも解せない。

 問題提議をしたいなら他にいくらでもやりようがある。安倍さんがヒトラーみたいになってきたとか叩かれ、軍国主義が復活だとかワーワー言われているこのタイミングに、なぜわざわざ国際社会で日本の評価を貶(おとし)めるような方法をとったのか。「犯人」である男にぜひ真意を聞いてみたい。

 こういう不可解な事件というのは、外交問題がこじれている時にちょいちょい起きる。

 例えば1994年、朝鮮高校に通う女生徒のチマチョゴリが何者かに切り裂かれるという事件が多発した、といういわゆる「チマチョゴリ切り裂き事件」である。

 当時の日本は今と同じく朝鮮半島とかなりバチバチしていた。米国から核ミサイル開発を継続しているなんて指摘された北に対して緊張が高まっており、じゃあ南とは友好的かといえば、そうではなく、相変わらず「従軍慰安婦」をめぐる熾(し)烈な反日キャンペーンが展開されていた。いや、ある意味で今よりもすさまじかった。

 まず、「国際法律家委員会」が、幼い少女を含む多くの女性が日本軍から監禁、暴行、拷問をうけて繰り返しレイプされたと言い出した。それを受けて猛バッシングが始まったもんだから、羽田内閣の永野茂門法務大臣が、5月3日にこんな釈明をした。

 「慰安婦は当時の公娼であって、それを今の目から女性蔑視とか、韓国人差別とかは言えない」

 つい最近も似たようなことを言ってフルボッコにされた政治家がいたが、永野さんも例にも漏れず発言から4日で辞任。これと前後して、朝鮮高校生徒のチマチョゴリが切り裂かれたというニュースが流れ始めたのである。

 そういう意味では、今回の「アンネの日記」事件と非常によく似ている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.