釜阪: 一方、むし歯にならないように歯を守っているのは唾液です。唾液の中に含まれるカルシウムが歯に溶け込んで、それが歯を再石灰化していきます。歯には血管がありませんから、血液からカルシウムをとることができません。歯は、唾液からしかカルシウムを補給することができないんです。
――むし歯ってそういうメカニズムだったんですか……カルシウムがポイントとは思いませんでした。歯に効く成分といえばフッ素かな、という印象があって。よく歯医者さんが、フッ素を歯に塗ったりしますよね。
釜阪: むし歯にならないためには、まず失われたカルシウムを(唾液で)補給して、健康な歯の上にフッ素コートすることが大事なんですよ。
――それなら、カルシウムとフッ素を溶かした液体歯磨きを作ったらいいのではありませんか? 歯磨きの後や、あるいは歯が磨けないときに、それでくちゅくちゅすればむし歯が防げるのでは。
釜阪: そう思うでしょう? ところが、それじゃダメなんです。
――えっ、なぜですか?
釜阪: フッ素はものすごく反応が早いんです。フッ素とカルシウムを一緒にすると、すぐに反応して結びつき、水に溶けなくなってしまうんですよ。だからフッ素とカルシウムは同時に使えません。さっき話したように、まず(唾液で歯に)カルシウム補給をして、その上でフッ素コートをする必要があるんです。
――なるほど。結局、唾液でしかカルシウム補給はできないということなんですね。……あ、だからガム。
釜阪: そうなんです。POs-Caはパッケージに「初期むし歯対策ガム」とうたっていますよね。初期むし歯を回復・再結晶化できる、第3世代のガムなんですよ。
――第3世代のガムということは、第1世代や第2世代のガムもあるんでしょうか。
釜阪: 1997年に代替甘味料のキシリトールが日本に入ってきて、各社がキシリトール入りのガムを出しました。グリコでも砂糖入りのガム「キスミント」を売っていましたので、同じ頃からキシリトール入りのキスミントも販売しています。これが第1世代の“歯にいいガム”ということになります。砂糖の代わりに代替甘味料を使っているシュガーレスガムですね。
第2世代は、シュガーレスであることに加えて、酸によってカルシウムが失われた歯の再石灰化を促進してくれるガムです。複数のメーカーから第2世代のガムが出ていますが、グリコでも「POsCAM(ポスカム)」というガムを2003年に出しています
そして第3世代のガムは、シュガーレスで、歯の再石灰化を促進する上に、歯を再結晶化してくれるガムということになります。第3世代ガムと言えるのは2011年に発売したグリコの「POs-Ca」だけです。かむことで、歯の結晶構造や硬度を取り戻すことができることを実証し、ガムとしては初めて特保を取りました。現在は、POs-Caの他に、POs-Caにフッ素を配合した「POs-Ca F(ポスカF)」という製品も販売しています。こちらは歯科医専用なので、歯医者さんにいかないと買えません。
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