――グリコでも歯を再石灰化できる第2世代のガムを販売しているということでしたが、それと再結晶化できる第3世代ガムのPOs-Caとはどこが違うんですか?
釜阪: POs-Caには「リン酸化オリゴ糖カルシウム」という新素材が含まれています。リン酸化オリゴ糖カルシウムは英語で"Phosphoryl Oligosaccharides of Calsium"なので、頭文字をとって「POs-Ca」としたんです。
さっき、「歯の主成分はハイドロキシアパタイトだ」というお話をしましたよね。
――はい、水晶と同じくらい硬い物質だけど、酸に弱いと。
釜阪: ハイドロキシアパタイトは「Ca10(PO4)6(OH)2」、つまり、カルシウム10個とリン6個が結びついてできていると思って下さい。一方、唾液中のカルシウムとリンの比率は3:10とか2:10くらい。つまりリンが多すぎる。これを、歯(ハイドロキシアパタイト)と同じ10:6くらいにしてあげれば、歯にカルシウムを補給して、再結晶化ができることになります。
――カルシウムが足りないならガムにカルシウムを足してあげれば良さそうなものですが……あ、分かった。それが第2世代のガムなんですね。
釜阪: そう、ただガムにカルシウムを入れただけでは、なかなか唾液にカルシウムが溶けないんです。カルシウムとリンというのは結合しやすい組み合わせで、すぐ結晶してしまう。リンと結晶してしまったら、カルシウムが水に溶けない。
リンには2本手があって、2本ともカルシウムとつないでしまうと結晶してしまい、水に溶けないんですね。カルシウムを水に溶かすにはどうしたらいいか? リンの2本の手のうちの1本があらかじめ水に溶ける物質とつないであれば、もう1本をカルシウムとつないでも結晶化しない、つまり水にカルシウムが溶けるのです。
――水に溶ける物質と1本だけ手をつないでいるリン……そんな都合のいい物質がその辺にあるものなんですか?
釜阪: ありません(笑)。だから作ったんです。植物に含まれるデンプンはリンを結合することが知られていました。そこに目をつけたんですね。
北海道に、馬鈴薯(ジャガイモ)でんぷんを原料にしてブドウ糖(果糖ブトウ糖液)を作っている工場があるんです。でんぷんからブドウ糖を作るには、馬鈴薯でんぷんを液化して糖化して精製します。この精製のときに残った糖化液を酵素でうまく分解し、精製していくことで、リン酸化オリゴ糖カルシウムを抽出することができるんです。
――あっ、また酵素が出てきましたね!
釜阪: そう、これも糖と酵素の話なんです(笑)。リン酸化オリゴ糖カルシウムがとれるのは全体の1%くらいと非常に少ないのですが、もともとは使われていなかった部分ですからね。その中にリン酸化オリゴ糖カルシウムという非常に価値がある成分が隠れていたということで、資源の有効利用という観点からも評価されているんですよ。この素材で、私たちは物質特許を取っています。
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