ここで冷静になってみよう。物事を覚えているというのはエネルギーがいることだし、覚えておく以上、そこには何らかの目的があるはずだ。もしそうでないなら、単純に女性は記憶力が良くて、男性が悪いということになってしまう。でもそれは、あまりに極論すぎるし、男性でも記憶力のいい人はたくさんいる。
最初のAさんの発言に、「だけど私は、日々このリミットがくるのをずっと見ていた」という発言があった。この発言を素直に解釈するなら、リミットが来たときのために「覚えておく」と言うことになる。すなわち、目的があるので覚えていられるということではないか?
そこで、別のグループにインタビューしたときの内容を見直してみて、関連しそうなところを見つけた。それはこんな具合だ。
Jさん:夫婦喧嘩のときに、夫の方が論理的に勝ちそうになると、私が明らかに勝っている昔の事象を持ちだして被せることがあるんです。よく夫に「おまえはずるい」と言われるんですけど、必ずこのパターンなんですよね。とにかく私の場合は勝ちたいから、絶対に負けない事象を必ず見つけるんですよ。
溜田:少なくとも大事なもの(っていうのかな……)はちゃんととっておくということですね。負けない事象っていう切り札はとっておく、と。昔の別れとか切り札にならないものは捨てて、忘れていく、と。論理的に分析しようとすると、ですけどね。
Jさん:マネジメントの話でいうと、男性の管理職に良くしてもらったとか本当に困ったときに助けてもらったこともよく覚えてるんです。たとえそれが10年前とかでも。だから10年経っても「この人はいい人だよ」っていうし、逆に、5年前の失敗でもこいつはダメだなって思ったことを忘れずに「こいつはダメだよ」って言う。だから女の方が怖いかも。
この後、上司との関係に話が展開していくのだが、それはまた別の機会に譲るとして、キーワードは「絶対に負けない事象を必ず見つける」だろう。すなわち、
という解釈だ。
関係が続いている限りは当然「いつか戦う場面」が存在するので、いつまでも「溜めておく」し、別れ話が決着すれば、当然、“証拠”をたくさん溜めている女性側の勝ちになるはず。そして、もう「溜めている」必要もないので、前回の「忘れる」という状態になるわけだ。
と、ここまでは矛盾なく考えることができる。
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