「何を言っているのだ。就活の時期は各社横並びだし、就活生はリクルートスーツを制服のように着て、新卒一括採用は、今までと全く何も変わっていないではないか」という声が聞こえてきそうです。事実「就活は多様化していますよ」と、実例を添えた記事を書いたら「こういうのはレアケース。学生はだまされないこと」という意のコメント付きツイートをする大学の先生もいるくらいですから、多くの人にとっては「実感のないこと」なのかもしれません。
しかし今は、就活生だからといって、リクナビやマイナビなどの就活情報サイトを使って就活をしなければならない、という時代では、もはやありません。先日も、ある内定者たちにグループインタビューをしていたのですが、参加者の中で「リクナビやマイナビを“使って”」就職活動をしたという学生は、ほとんどいませんでした。登録をしている人は多い、けれども使わなくても内定を取る学生がゴロゴロいる……そうなってきているのです。
転職もそうです。かつては転職サイトに掲載されている求人広告を見て応募するというケースが一般的でした。ヘッドハンターなどからスカウトがかかるという人もいましたが、それこそレアケース。
でも今はどうでしょう。自分のポートフォリオを登録するサービスを利用していれば、「転職をお考えではないですか?」というお誘いメールが山のように来ます。転職エージェントを使っての仕事探しも一般的になり、SNS(ソーシャルネットワークサービス)などで知り合った人を通して転職するというケースも増えて、この手のマッチングサービスは百花繚乱。まさに選ぶのが難しいくらい……そう、多様化しているのです。
今までのように、就活ならこのやり方、転職ならこの方法と、他の方法を選びようがなかった時代から、自分の意思で様々なアプローチ方法が見つけられ、実施できるようになった。見方によっては「企業への入り口は多様化した」といえるでしょう。この流れは今後も加速度的に進むと思います。企業も人を採るということに関しては、相当腕を磨いてきていますから。しかし、入り口が多様化した割に、その先は相変わらずというケースが少なくありません。
先日、ある企業の人事担当者と従業員の評価制度について打ち合わせをしていました。新しいアイデアと仕組みについていくつか提案したところ、「自社の問題点を洗い出せるし、評価する仕組みとしても極めてユニーク(=この場合は面白いというよりも個性的といった意)でいい」と、上々のコメントをもらいました。「ぜひトライしてみたい」と言われたのですが、そこでボソッと付け加えられた一言がとても印象的でした。
「さて、この仕組みを納得してもらう人たちへの対応が、極めて厄介だ」
仕事柄、新しい仕組みやシステム、仕事のプロセスなどを企業に提案し、導入してもらうことが少なくないのですが(=先週まで連載していた就活・転職に関しても、それらの仕事の一環に過ぎません)その過程の中で、必ずといっていいほど出現してしまう「障壁」があります。それは、その仕組みやシステムが導入されることによって不利益を被る人。
こう書いてしまうと「自分たちが損をするシステムが導入されるのを、全力で反対するのは当然だろう」というお叱りの声が聞こえてきそうですが、実は話の順序が逆。新しいシステムが導入されることによって不利益を被る人たちの多くは、今の状況で企業に不利益をもたらしている人、なのです。ある意味、その人たちを排除するために新しい仕組みを導入するといっても、過言ではありません。
ただ、新しい仕組みを導入して、古い人を排除するというやり方は、別に今に始まったことではありません。「新陳代謝」という言葉の通り、新しいものが古いものに取って代わり、企業の組織はリフレッシュできていたのです。けれども、それがなかなか難しい、つまり新陳代謝が上手くできない組織が増えてきました。そう、企業もメタボリックシンドロームに陥り始めている、という怖い話なのです。
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