組織内コミュニケーションを勘違いしているマネージャーになっていませんか?サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/3 ページ)

» 2014年04月28日 09時28分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
そういえばアイティメディアでも、昨年は任意参加のランチ「ベーグルウエンズデー」という企画がありました(写真はイメージです)

 また、飲みに行く費用を企業が負担したり、強制的とも言える状況を仕組みとして作り出して、みんなを参加させたり、ランチタイムの交流を促進する策を用意したりと、皆さんある意味、必死です。

 そういう行為を通して、職場内での関係性を構築していくことにより、今まで以上にチームワークができるようになる、風通しが良くなることで、仕事のパフォーマンスが向上する、という理屈です。さまざまな場所で、事例が紹介されているので、目にしたことがある人も多いでしょう。

 確かに美味しい食事を共にすることで、仲間意識が生まれ、意思疎通をよくすることに効果を発揮するでしょう。お酒が入ることによって、緊張が緩んで、普段言えない本音の部分が見えることもあるでしょう。それによって、近寄り難いと思っていたけれども、実は親しみやすい人だった、というような気づきが生まれることも否定しません。

 しかし、組織内コミュニケーションとは、そういうことなのでしょうか。冒頭で挙げた、私が入ったちょっと残念なレストランは、コミュニケーションはとても取れていて、意思疎通も十分です。風通しもいいので、職場としての居心地もいいはず。ですが……もう、お分かりですよね。

コミュニケーションを取る機会は、実はふんだんにある?

 風通しの良い職場を作る、コミュニケーションの量を増やす、そういう施策に意識してトライしている企業が増えている背景には、働く人それぞれの接点が減っているという問題意識が、マネジメントする側にあるといいます。ですから、接点を増やす、人柄が分かるようにする、という方法論で解決しようとしています。

 しかし、コミュニケーションを取る機会は、以前と比較して本当にそんなに少なくなっているのでしょうか。

 例えば、ある企業のマネージャーのスケジュール帳を見せてもらう機会がありました。ビッシリと会議の予定が詰まっていて、もう、他の予定が入らないほどです。そのマネージャーは「これでも最小限、出る必要のある会議に絞っているのですが、この程度は仕方ない感じです」とのこと。時間がなくて自分の率いている組織のメンバーとのコミュニケーションが取れず困っていると悩んでいたのですが、そこにボタンの掛け違いがある。

 会議とは、文字通り関係者が顔を突き合わせて、課題について相談や議論し、何かを決める機会のこと。そう、これこそ実はビジネスの中で必要なコミュニケーションそのものです。

 それなのに、メンバーとの意思疎通が図れず、コミュニケーションの不足をぼやく状態なのは、実はオカシイと自覚すべきです。スケジュール帳ビッシリのコミュニケーションの機会が存在している人たちが、これ以上どうやってコミュニケーションの量を増やそうというのでしょうか。

大事なことは、ビジネスで必要な情報が流通するか、否か

 同じ場所で顔を突き合わせて仕事をするわけですから、メンバーの意外な一面を知っておくことに価値があることは、十分承知しています。しかしそれを理解したからといって、ビジネスの効率が上がるわけではない。そんな回り道をしなくても、いま取っているコミュニケーションの機会、つまりたくさん溢れかえっている会議の中身を精査するだけで、企業内のコミュニケーションの質は格段に向上しますし、意思疎通も図れます。

 言いたいことが言える環境が必要だという問題意識にしても、言いたいことの定義が曖昧なので言うことができない、かつ、会議は言いたいことを言う機会なのに、言いたいことが言えない状況になっている、ということを、もっと考えるべきです。社内で居酒屋を開くことで何でも話せるようになる、そういう施策に費用を割く、ということだけで解決すべきではないのです。

 「部下が何を考えているのか、さっぱり分からない」と困惑しているマネージャーの多くは、部下と個別に接点を持ちたがります。しかし、大切なのは個別に接点を持ち、何を考えているのか「アンオフィシャルな」ところで、コッソリと聞き出すことではありません。

 何を考えているのかを、部下が上司に正直に包み隠さず説明する機会を、それこそ、就業時間の中で、用意することなのです。本来は、そういう風通しの良さが求められているはずです。いま行っている会議を少し見直すだけで、ランチタイムの外食費補助という経費は削減できる……かもしれません。

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