1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
漫画『美味しんぼ』が炎上している。
主人公が福島へ取材に訪れた途端に鼻血がタラ―っと流れたり、同県双葉町の井戸川克隆・前町長を登場させて「福島に住んではいけない」とするセリフを掲載したりというダイナミックな描写が物議を醸し、福島県やら、震災がれきの受け入れをしている大阪市・大阪府やらから抗議が殺到しているのだ。
筆者も福島に何度か取材で訪れたが、被ばくして鼻血が出たという人には会ったことがない。読んでみたが、ぶっちゃけ「うーん」と首をかしげざるをえない箇所も多々あった。そういう意味では、自治体や福島のみなさんが「風評被害を助長する」と怒るのもすごくよく分かる。
もうすいぶん前になるが、茨城県・東海村で臨界事故があった。600名以上が被ばくして、急性被ばくした2名が死亡。国内初の原子力の死亡事故である。発生時から現場で取材をしていたこともあり、定期的に東海村に通っては事故を起こした作業員への取材などを続けていた。そんなある日、現場付近で取材中、複数の男性たちにからまれた。
「あんたたちマスコミが騒ぎすぎたから、このへんじゃあ商売やってもすぐに潰れてしまう。たいした事故じゃなかったんだから、もう放っておいてくれ!」
えらい剣幕で怒られて、男たちも増えてきたので、これはヤバいとクルマに飛び乗り、逃げるように走り去ったのを覚えている。原子力事故は「被害」を報じるだけで、その場で暮らす人々の生活を脅かしてしまう側面がある。だから、安全を訴える科学は歓迎されるが、そこに疑いの目を向けた者は住民たちから「敵」と吊るし上げられる。
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