皆が出世できないと分かっている、そんな時代のマネジメントとはサカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/3 ページ)

» 2014年06月09日 09時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

高卒者が出世できなくなってしまった時代はつい最近?

 ここで質問です。新卒で就職した人の中で、大卒者が高卒者を上回った年はいつだか、ご存知ですか? 多くの人の感覚だと「30年くらい前じゃないのか?」とか「今の部長が入社した時あたりを考えると、25年?」という答えが出てくるかもしれません(=この原稿を書く前に周囲に質問してみて、もらった回答をそのまま書いてみました)。

 正解は平成10年。1998年です。まだ、たったの16年ほどしか経過していないのです。ちなみに、中卒者を高卒者が上回ったのが1965年頃といわれていますから、やっと50年程度です。16年前といえば、いま38歳くらいの中間管理職が新入社員だった時代。その頃には、まだ高卒で働くという人の方が多かった、そして、それ以前から働いている人、つまり社歴や職歴といった、年功でいう序列の前にいる高卒者は、もっと多かったということです。

 さらに余談になりますが、労働力としてではなく、幹部として大卒者を採用する、いわゆる新卒一括採用の起源はだいたい1920年頃だとされています。その後、一貫して大卒者=企業の幹部候補として採用され続けるのですが、1968年頃、高卒者の不足から、大卒者のブルーカラー化が問題になったといいます。こういう風に時系列で見ていくと、年功序列という仕組みは別段強固なものでも何でもなく、時代と労働市場の需要と供給のバランスによって、揺らいでいたことが、垣間見えます。

皆が同じように出世できないのに、同じように働かせる罪

 大卒者が労働力として扱われるようになって、45年以上が経過しました。当たり前のことを書いていると思われがちですが、大卒者だからといって、経営幹部、管理職にならない、いや、なれないという歴史は、少なからずあるのです。けれども、残念なことに、働き方やキャリアプランはなかなか多様化しない。最近、入り口の部分で『地域限定』など、ある種のカテゴリーを設定して振り分ける採用が現れ始めていますが、なかなか大きな流れにはならない。

 組織をマネジメントする現場でも、キャリアプランが多様化しない、または本当は多様化しているのに、見た目、もしくは意識的に一律にしていることの弊害がたくさん噴出しています。本当は差がついているのに、そうではないように演出して、一定レベルのモチベーションを維持させながら、ある程度のレベルの仕事をさせたいという企業の思惑は、もう通用しません。しかし、いまだにやっているケースが後を絶たない。

 高卒だけど叩き上げで出世したという、いまとなっては希有な事例が社内にあれば、自分にもチャンスがあると信じることができるでしょう。または、どんなに仕事ができない人でも、キチンと年齢がきたら昇進していく、そして、キチンと役職が提供されている、という状態を目の当たりにすれば、それを信じて頑張ることができるでしょう。しかし多くの人にとっては、どちらも望むべくもないのが現状です。

(写真はイメージです)

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