皆が出世できないと分かっている、そんな時代のマネジメントとはサカタカツミ「新しい会社のオキテ」(1/3 ページ)

» 2014年06月09日 09時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。就活や転職関連のサービスをプロデュースしたり、このような連載をしていたりする関係で、そちら方面のプロフェッショナルと思われがちだが、実は事業そのものやサービス、マーケティング、コミュニケーションの仕組みなどを開発するのが本来の仕事。

 直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」「MakersHub」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』。この連載についても、個人的に書いているブログでサブノート的なエントリーを書く予定。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


 今日は、ちょっとした小話を。

 かつて、日本の企業の多くは年功序列というシステムがとても強固だったと言われていました。同期ならばだいたい同じ時期に昇進し、一定のレベルまではよほどの失敗がないかぎり、間違いなく出世していく。退職時には(多くの場合)職場の女性に花束を贈られ、拍手で見送られるという光景が当たり前だった……とされています。が、本当にそうだったのでしょうか。

 以前、タクシーに乗った時のこと。東京の日本橋界隈を走ってもらったのですが、運転手さんが周辺の道や事情に、ものすごく詳しい。不思議に思って尋ねてみると「以前、このあたりの会社に勤めていたものですから。長年ずっと過ごした場所ですから、詳しくて当然ですよ」とのこと。

優秀な社員だったのに、退職を余儀なくされた理由

すべての道は日本橋から始まる(日本では)

 定年退職をした後に、タクシーに乗っているのかと質問すると「いやいや、そんなに老けて見えますか? 会社が嫌になったので、我慢しきれずに辞めたのです」と、少し悔しそうに身の上話を始めました。高校を卒業して、ある金融関係の会社に入社。人当たりの良さもあって、営業という仕事は天職であると感じていたそうです。成績はそれなりに優秀。部下もできて、会社の中でもキチンとポジションを確立していたと思っていた、といいます。

 「ところがですよ、お客さん。徐々に会社に入ってくる新人の学歴が大卒になってきたのです。で、気がついたら大卒ばかり。そうすると、大卒と高卒では、もともと出世のスピードや給料の上がり方も違っていたのですが、大卒者が多くなると、その差がさらに広がり始めたのです」

 年下の人間にドンドン頭を超えられていく。しばらくは我慢していたらしいのですが、今までは就けていたポジションにもう就くことができない、年功序列という言葉のルールさえ適用外の人間になってしまった、ということに気がついて、早期退職したそうです。同じ時期に入社した高卒の社員は、自分を最後にして、すべて退職してしまったと悔しそうに語っていました。

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