では何のために法人税減税をするのか、という話になります。
「法人税を下げて海外の優良企業に日本に来てもらう」というレベルにするにはシンガポール並みに20%を切るくらいにしないといけないでしょうから、少し無理があります。
そこまでいかなくても、「グローバルな活動をしている日本企業に日本で活動してもらう」という程度の効果はあるでしょう。
日本の企業は外国のグローバル企業に比べて「六重苦」と言われるような厳しい環境で戦っています。円高、雇用規制、高い電力コスト、貿易自由化の遅れ、厳しい環境規制、そして高い法人税率の「六重苦」は、日本企業低迷の元凶と言われました。民主党政権はそれに対して積極的に対処しませんでしたので経済界がそっぽを向いてしまった時期がありました。
「経済再建」を目指す安倍自民党政権が、金融緩和をして円高を解消したり、TPPへの参加検討をしたり、派遣法を見直したり、シェールガスの権益確保などに動いたりしているのは、すべて「六重苦」の解消のためです。つまり、法人税減税の狙いは「日本企業の経済活動環境の改善」なのです。
法人税減税は、「大企業優遇」と批判されがちです。確かに法人税減税の直接的な恩恵を受けるのはグローバルな経済活動をしている一部の大企業です。
では、国内で仕事をしていて、かつその多くは赤字である中小企業には法人税減税は関係がないかというとそうではありません。
中小企業は大企業から多くの仕事を請け負っています。大企業が苦境に立つことは日本経済のすそ野を支える中小企業にとっても困ること。それらの企業が作る製品を通じて、私たち個人にももちろん影響があります。
日本企業の大きな工場はもう日本には建設されなくなっていますが、本社を海外に移転する企業も増えています。企業が出て行ってしまうと雇用がなくなり、失業する人が出てくるでしょう。工場がなくなり、働く人がいなくなれば、その地域全体の経済的ダメージがあります。
まずはこれ以上、企業を外国に出て行かせないことが大事だと思います。法人税減税は、「政府は日本企業の経済活動の環境整備に向けて頑張っています!」という意思表示でもあるのです。
「法人税減税=大企業優遇」とか「赤字企業ばかりだから無意味」と批判ばかりせずに、多面的かつ長期的視野で評価したいものですね。(川瀬太志)
※この記事は、誠ブログの「法人税減税の狙いはなんなのか?」 〜日本企業の「六重苦」とは?〜より転載、編集しています。
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