1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
新潟の「医療過疎」を取材していた時、高齢化率4割というとある無医村で、興味深い話を耳にした。
無医村を解消しようと、インターネットで常勤医の募集をしたところ、東京の若い勤務医から応募があった。僻地医療に対する志もある。おまけに、「田舎暮らし」を望んでいるということで、話はトントン拍子にまとまり、東京の病院を辞め村へ移住してもらうことになった。
無論、村の高齢者たちからは喜びの声があがったが、ほどなくそれは失望の声へと変わってしまう。村の元気なご老人たちに対して、若き医師が行なった「診察」が問題だったのだ。
「今のまま、おいしいものを食べて、よく寝て、たまに歩くなどの運動をしてください」
これのいったい何が問題なのか。実際に高齢者たちから「不満」を告げられた隣町の医師が教えてくれた。
「この村に限らず、高齢者にとっての“医療”というのは、少しでも身体に異変があったらすぐに薬を処方してくれること。薬を欲しがる患者に対して彼は『飲む必要がない薬を飲むと、お身体に負担がかかります』と一生懸命諭しましたが、しばらくして “あの若い医師は薬に頼らない自然治療をすすめている”なんて噂もまわって問題になってしまったのです」
高齢者医療の現実を思い知らされたこの若き医師はほどなく村を去ったという。
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