意識高い「新シニアとその子ども層」にも──富士通「らくらくスマートフォン3」投入の意図“いや、わしは年寄りじゃない”、ここに工夫を(2/3 ページ)

» 2014年07月24日 13時00分 公開
[岩城俊介,Business Media 誠]

外観デザインのよさと家族のつながりを意識した、らくらくスマートフォンの新モデル

 富士通は7月23日、スマートフォン新機種「らくらくスマートフォン3」(NTTドコモ向け)と従来型携帯電話新機種「ドコモらくらくホン8 F-08F」(同)を発表。らくらくスマートフォン3を2014年7月26日に発売する(ドコモらくらくホン8は2014年9月中旬発売予定)。

 らくらくホン、らくらくスマートフォンシリーズは、累計2500万台を販売し、現在も約900万人が使用。指名買いや機種変更(次もらくらくホンへ)の率も高い、シニア向け携帯電話として高い知名度がある主力ブランド。らくらくスマートフォン3は、シリーズ共通の見やすさ、聞きやすさ、使いやすさの工夫はそのままに、外観デザインとメニュー画面のカラーを統一し、より洗練された見た目となった。

 ポイントは、“意識の高い”シニア層(利用者)と、その子ども世代(贈る、使わせる)、それぞれへの訴求。自身の所有満足度と“家族のつながり”を商品テーマに込め、まだスマートフォンを利用していないシニア層が求める上質なデザインの実現と、スマートフォンに対する不満・期待の声を集約し、分析。「今、この世代に求められている」スマートフォンに仕立てたという。

photo らくらくスマートフォンシリーズのコンセプト

 デザインとユーザーインタフェースは、無印良品のアートディレクションなどを手がけ、らくらくホンシリーズとしても「らくらくホン ベーシック」を手がけたグラフィックデザイナーの原研哉氏が手がけた。手になじむフォルムや推しやすいホームボタン、操作性を向上した専用のメニュー画面、そして深いつやのある赤、パール塗装の白、落ち着いたつや消し黒など、所有者の感性を考慮した上質なデザインに工夫した。「らくらくシリーズ=老人向け、そんなつもりはまったくない。普通のことを普通に簡単にできる──そんなプロダクトを目指しました」(原氏)。

 操作メニューも、本体カラーと画面色を統一し、美しく一体感のあるデザインにした。操作部をボタンのように立体的に見せて押しやすく、アイコンのデザインや配置も見直し、そして表示する文字も半角や長体を使わないよう見やすさを徹底した。触れて震えるタッチフィードバック機能により、タッチ操作ながら実際のボタンを押すような感触が得られる操作感向上の工夫も、前モデルより継承して搭載する。

photo 原研哉氏がプロダクトデザインを担当
photo “新”シニア層が手にしても満足できるデザインにしたと原氏
photo 2000年ごろの60〜70代と違い……
photo 2014年の60〜70代はIT機器に対する意識も嗜好も違う
photo 「家族」の概念も、住む場所は離れていても“通信やセキュリティ、ネットサービスなど”でつながっているととらえる考え方もできるようになった。これらをふまえたニーズや機能を新たならくらくスマートフォン3に込めた

 富士通のハイエンドスマートフォン「ARROWS NX F-05F」に採用した、高精度な日本語入力システム「Super ATOK ULTIAS(関連記事参照)」も採用。先進性のアピールというより、高精度の入力環境を「使いやすさの徹底」のために用いる。テンキースタイル(従来型携帯電話)のらくらくホンから乗り換える多くのシニア層を意識し、押した行の文字がすべてポップアップ表示する、スマートフォンならではのテンキー入力+α的な新たな入力方法「らくらく2タッチ入力」も初めて搭載した。

photo 高精度な日本語入力機能「Super ATOK ULTIAS for らくらく」、テンキースタイルのらくらくホンに慣れた人の以降を意識した新入力方式「らくらくツータッチ入力」を採用した

 現代のICT環境を生かした、“離れていてもつながる”の概念を取り入れたのもかなり大きなポイントだ。新たに「ファミリーページ」と呼ぶ家族専用のSNS的機能を備え、利用者が意識せずとも、ミドル層(子どもや孫)からのメッセージや写真をトップ画面(待受画面)へ自動で表示できるようにした。

photo 「家族のつながり」を意識した機能を盛りこんだ理由

 ミドル層や孫は、自分のスマホに「ファミリーページアクセス用の専用アプリ」(Android版/iOS版)をインストールし、メッセージや写真を投稿するだけで「親(あるいは祖父、祖母)の」らくらくスマートフォン3へ直接メッセージや写真を届けられる仕組み。汎用アプリを使わせるより「教える側も簡単」。なるほどと感心できる「親へ贈る/使わせる」のプラスαを後押しできる機能といえる。

photo 送りたいメッセージや写真を送れる家族専用SNS機能「ファミリーページ」。「親のスマホへ直接」表示させられるのがミソだ

 また、スマートフォンは何か嫌──。そう言うシニア世代に向け、従来型デザインのらくらくホン「ドコモらくらくホン8 F-08F」も用意する。

 折りたたみボディで押しやすいボタン型のテンキー搭載。3つのワンタッチダイヤルボタン、聞き取りにくい声を補正する「スーパーはっきりボイス3」、相手の声をゆっくり聞こえる用にする「ゆっくりボイス」など、前モデル「ドコモらくらくホン7」をベースにカメラ機能の強化やデコメ絵文字数を増やし、小変更を加えた。操作方法や料金などの相談を無料で受けられる「電話相談窓口」専用ボタンも継承して搭載する。

photo 通常ケータイスタイルの「ドコモらくらくホン8 F-08F」も用意する

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.