竹内: もう1つの理由は、景気の問題が大きいと思いますね。景気が悪いときには子どもを産んでも、育てることが難しくなる。ということを本能で感じることができるので、いろいろなことを“抑えよう”という気持ちが働いているのではないでしょうか。
阪神・淡路大震災が起きたあと、兵庫県明石市のとあるクリニックが研究を行いました。震災と男性の精子にどのような関係があるのかを調べたところ、震災でよりダメージを受けた男性ほど精子が不活発になっていることが明らかになりました。地震で自宅が崩れ、身内を亡くした……というある男性はストレスの影響で、1年ほど精子が不活発でした。
経済的な不安、家族を失った悲しみというストレスが原因で、長期間にわたって子どもをつくることができない体になったのですが、それは“環境に適応している”とも考えられるわけです。
土肥: なるほど。
竹内: いまの自分の周囲で起きている状況を考えれば、「子どもをつくるタイミングではない」と。もし子どもをつくってもきちんと育てることができないので、体が自然に適応していたんですよね。
少し話がそれましたが、20代男性で「現在恋人がいる」のは22%、30代男性では15%ということですが、彼らが「モテていない」ということではないと思うんですよ。今の若い人たちは景気がよいときを経験していないので、自信を失っているのではないでしょうか。
彼女をつくったらデート代にお金がかかってしまう。結婚したら奥さんを養っていかなければいけない。子どもができたら養育費にお金がかかってしまう。そんなことを考えたら、いまの自分の給料では無理だ……。そんな不安といまの状況を考えて、“適応”しているんだと思いますね。
1つめの理由として「精子競争」をご紹介しました。本当に「彼女をつくりたいと思わない」と意欲がわかないのであれば、精子競争が影響しているのかもしれません。そうではなくて、漠然として将来の不安が原因で「彼女をつくりたいと思わない」のであれば、景気が影響しているのかもしれません。いずれにせよ、この2つ要因は、いまの若い人たちに大きく影響しているのではないでしょうか。
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