ビッグデータ時代、法律は“プライバシー”を守れるのか「日常」の裏に潜むビッグデータ(4)(2/3 ページ)

» 2014年09月01日 08時00分 公開
[野々下裕子,Business Media 誠]

現行の法律では「ビッグデータ時代」に対応できない

 現代の生活においては、銀行やクレジットカードの利用にはじまり、ICカードの自動改札機、インターネットやスマートフォンの利用履歴、店頭や街頭、車載カメラなど、ユーザーの自覚があるなしにかかわらず、あらゆるところで個人の行動履歴や関連データが収集されている。

 だからこそ、それらを活用してビジネスチャンスや経済活性化につなげようという話が出てくるわけだが、“どのようなデータをどこまで利用していいか”という基準は明確に定まっておらず、あいまいな状態だ。特に個人の行動や状態を記録した「パーソナルデータ」は、プライバシーに関わるため扱いが難しい。

 「“個人の情報”であれば、個人情報保護法で守られるのではないか」と思うかもしれないが、個人情報保護法が成立したのは2003年のこと。現在のようなネット社会を想定して作られたものではない。

 2014年6月に起きたベネッセコーポレーションの個人情報漏えい問題では、政府は再発防止策として、2015年の通常国会で提出される予定である「個人情報保護法改正案」の中で漏えい対策の強化を盛り込む方針を発表し、同時に業界全体へ個人情報の適切な扱いを徹底するよう求めた。

 その際、菅義偉官房長官は記者に対して「情報を流出された被害者が申請すれば、個人情報を消去できる権利はあるが、そのすべてを消去できるわけではない」と、現行の法律では対応に不備が残ることを指摘している。

 前述したNICTの実証実験も、中止した理由の1つに「政府でもパーソナルデータの利活用について検討中であること」が挙げられている。つまり、現状では企業がパーソナルデータを扱いたくても、合法と違法を分ける基準がなく、問題があった場合にどう対処すべきかも明確でない状態と言える。

photo プライバシーバイザーの装着イメージ。カメラを通して見るとLEDが光って見えるが、人間の目では認識できない近赤外線を使っている(出典:NII)

 こうした問題に対し、“ユーザー側が情報を守る”というアプローチも出てきている。国立情報学研究所(NII)からは、スマホやメガネ型ウェアラブル機器による盗撮や意図しない写り込みを防ぐ技術「プライバシーバイザー」が発表された。

 これはカメラの顔認識を失敗させる光を発するメガネ型のデバイスだ。顔認識を失敗させることで、仮に第三者が自分が映り込んだ画像をインターネット上にアップしても、Webの画像検索(ある画像に似た画像を探す検索)などでヒットしにくくなるという。サイバー空間に限られるが、プライバシーを守るのに一定の効果があると期待されている。

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