生活は便利に、でもプライバシーは“丸裸”? ビッグデータ活用の光と影「日常」の裏に潜むビッグデータ(2)(1/3 ページ)

» 2014年08月04日 08時00分 公開
[野々下裕子,Business Media 誠]
photo 子どもの誕生へのお祝いとして贈られる「銀のスプーン」。初対面の人に渡すようなものではないはずだが……

 2019年。とあるベンチャーキャピタルで、情報分析サービスを提供する新規ベンチャーA社に投資すべきか決める会議が行われていた。

 プレゼンを始める直前、A社の創設者が会議室に集まった投資家の1人にプレゼントを渡した。投資家がプレゼントを開けてみると、中には子どもの誕生を意味する銀のスプーンが入っていた。

投資家: ! 家族以外には話していないのに、なぜ子どもが生まれたことを知っている?

創設者: これからプレゼンするサービスは、あなたが利用するスーパーの会員情報を使ったものです。

投資家: それが何の関係があると言うんだね?

創設者: あなたの購買履歴を見たところ、ワインの消費量が減って、野菜と乳製品の購入量が増えていた。データを分析した結果、近々、お子さんが生まれると推測したのです。

投資家: たったそれだけのデータでなんと……。

創設者: バラバラでは価値のない情報も、1つに集めて分析すれば大きな価値を持ちます。そのシステムを当社は提供できるのです。それでは我が社のサービスをご紹介しましょう……。

 そして、数分のプレゼンの後、満場一致でA社への投資が決まった。

短期集中連載:「日常」の裏に潜むビッグデータ


既存のデータに“+α”の視点を加えて、新しい気付きを

 これは、とある海外ドラマの1シーンだ。このストーリーから分かるのは「ユーザーの習慣と行動心理を分析し、何を求めているかを予測すること」が、ビッグデータ活用の方向性の1つであることだ。

 ユーザーが何を求めているかを予測する機能は、現在でも存在する。オンラインショッピングの世界では、どの商品をチェックし、購入したかというアクセス履歴を基に、商品をオススメするレコメンド機能がAmazonをはじめ、多くのECサイトで実装されている。現在こそ、過去のアクセス・購買履歴を基に、同じものや、似た傾向の商品を提供する程度かもしれないが、データ解析の技術が進化すると、今後はどうなるだろうか。

photo Amazonなど多くのECサイトでは、アクセスログなどを基に商品をオススメする機能が実装されている

 例えば、単純な売り上げ情報に加えて、天気や温度といった別の要素を加えて分析すると、新しい気付きが得られる場合がある。現在、ビッグデータの活用事例として目にするものの多くは、今までPOSや顧客データベースで集めた(すでに保有している)大量のデータに、異なる要素を加えて分析し直したものだ。

 全国チェーンで展開するスーパーやコンビニの場合、数カ月でデータが大量に集まる。それらを分析するだけでも価値はあるが、それだけでは競合との差異化は図れない。そこで、データアナリストやデータサイエンティストと呼ばれる、分析の専門家たちの力を借りて、データの集め方を変えたり、分析方法を変えるなどして、よりビジネスにつながる気付きを得ようという動きが進んでいる。

 今やビッグデータの活用例は、マーケティングだけにとどまらない。天気予報や病気の流行予測、選挙運動対策など利用用途は多岐にわたる。それぞれの例を紹介していこう。

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