2019年。とあるベンチャーキャピタルで、情報分析サービスを提供する新規ベンチャーA社に投資すべきか決める会議が行われていた。
プレゼンを始める直前、A社の創設者が会議室に集まった投資家の1人にプレゼントを渡した。投資家がプレゼントを開けてみると、中には子どもの誕生を意味する銀のスプーンが入っていた。
投資家: ! 家族以外には話していないのに、なぜ子どもが生まれたことを知っている?
創設者: これからプレゼンするサービスは、あなたが利用するスーパーの会員情報を使ったものです。
投資家: それが何の関係があると言うんだね?
創設者: あなたの購買履歴を見たところ、ワインの消費量が減って、野菜と乳製品の購入量が増えていた。データを分析した結果、近々、お子さんが生まれると推測したのです。
投資家: たったそれだけのデータでなんと……。
創設者: バラバラでは価値のない情報も、1つに集めて分析すれば大きな価値を持ちます。そのシステムを当社は提供できるのです。それでは我が社のサービスをご紹介しましょう……。
そして、数分のプレゼンの後、満場一致でA社への投資が決まった。
これは、とある海外ドラマの1シーンだ。このストーリーから分かるのは「ユーザーの習慣と行動心理を分析し、何を求めているかを予測すること」が、ビッグデータ活用の方向性の1つであることだ。
ユーザーが何を求めているかを予測する機能は、現在でも存在する。オンラインショッピングの世界では、どの商品をチェックし、購入したかというアクセス履歴を基に、商品をオススメするレコメンド機能がAmazonをはじめ、多くのECサイトで実装されている。現在こそ、過去のアクセス・購買履歴を基に、同じものや、似た傾向の商品を提供する程度かもしれないが、データ解析の技術が進化すると、今後はどうなるだろうか。
例えば、単純な売り上げ情報に加えて、天気や温度といった別の要素を加えて分析すると、新しい気付きが得られる場合がある。現在、ビッグデータの活用事例として目にするものの多くは、今までPOSや顧客データベースで集めた(すでに保有している)大量のデータに、異なる要素を加えて分析し直したものだ。
全国チェーンで展開するスーパーやコンビニの場合、数カ月でデータが大量に集まる。それらを分析するだけでも価値はあるが、それだけでは競合との差異化は図れない。そこで、データアナリストやデータサイエンティストと呼ばれる、分析の専門家たちの力を借りて、データの集め方を変えたり、分析方法を変えるなどして、よりビジネスにつながる気付きを得ようという動きが進んでいる。
今やビッグデータの活用例は、マーケティングだけにとどまらない。天気予報や病気の流行予測、選挙運動対策など利用用途は多岐にわたる。それぞれの例を紹介していこう。
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