次のブームは? “変わりうどん”が流行る日仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた(後編)(1/5 ページ)

» 2014年09月03日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた:

 「今日のお昼ごはんも『うどん』にしよう。のどごしのツルツル感がたまんないよ」という人も多いのでは。全国の男女に、最もよく食べる麺類を聞いたところ「ラーメン・中華めん」に次いで、「うどん」は2位。自宅でよく食べる麺類については「うどん」が1位だった(マイボイスコム調べ)。

 街を歩いていても、クルマを運転していても、「うどん屋」の看板を目にすることは珍しくないのだが、ひとつ気になることが。それは「なぜうどんの本場『香川県』から、チェーン店が出てこないのか?」である。例えば、業界最大手の「丸亀製麺」を運営しているトリドールの本社は兵庫県神戸市。2位の「はなまるうどん」は香川県高松市で創業したものの、現在は吉野家ホールディング傘下で本社は東京都中央区。

 大手2社がたまたま都市部に拠点を置いているだけであって、中堅は香川県に本社を置いているのかもしれない。気になったので調べてみると、「つるまる」を運営しているフジオフードシステムの本社は大阪府大阪市。「どんどん庵」を運営しているディー・ディー・エーの本社は愛知県名古屋市。「麦まる」を運営しているグルメ杵屋の本社は大阪府大阪市。

 うどんチェーンを運営する上位5社の本社は、いずれも香川県ではない。「なんと! これは興味深い」と思って、さらに調べていくと、すでにこの問題を分析している人がいらっしゃった。香川大学大学院で教壇に立つ高木知巳(たかぎ・ともみ)准教授は、香川県からうどんチェーン店が出てこない理由として「職人と商売人の発想の違い」を挙げている。どういうことか? 気になったので、話をうかがった。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

 →なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか(前編)

 →本記事、後編


ラーメン業界を分析

土肥: 前回は「なぜ、うどんの本場・香川県からチェーン店が誕生しないのか?」――その理由をうかがいました。香川県以外の人はうどんを食べ慣れていないので、うどんの違いがよく分からない。「このうどんはいりこの味がきいているなあ」という人はあまりいませんものね。全国展開を目指している「経営者」は、県外の人をターゲットに「必要にして十分」なうどんを提供している。

 一方、香川県民はうどんを食べ慣れているので、こだわりが強い。「このうどんの出汁は絶妙だ」などと口にする人が多い。なので、個性の強いうどんを提供する「職人」の店を好むんですよね。それでいて値段は安い。そんな特殊な市場なので、チェーン店はなかなか展開できなかった。

 うどんを効率的に提供する「経営者」と、こだわりの強いうどんを提供する「職人」とは、考え方が全く違う。こうした背景があって、本場の香川県からチェーン店が生まれなかったという話をしていただきました。そして、うどんだけではなく、ラーメンも分析したところちょっと興味深いことが分かってきたそうですね。

高木: うどん業界のチェーン店をみると、トップの丸亀製麺の売上高は783億円(774店舗、2014年3月末)、はなまるは230億円(330店舗、2014年2月末)。この2社がズバ抜けていて、3位以下で売上高が100億円を超えているところはありませんし、店舗数も100店を超えているところはありません。

 一方、ラーメン業界をみると、幸楽苑の売り上げが最も多く372億円(518店舗、2014年3月末)、次いで、日高屋が319億円(341店舗、2014年2月末)。このほか、上位10社すべてが100店舗を超えているんですよね。

 大手うどんチェーン店はすべて香川県以外の企業ですが、ラーメンチェーン店はどうなのか。幸楽苑は福島県で創業して、いまも本社を置いています。福島県はラーメンの外食費用が高く、喜多方や白河など「ご当地ラーメン」もあるので、“本場”と言えるでしょう。

 しかし、日高屋(ハイディ日高)は埼玉県、とん太(秀穂)は千葉県、丸源(物語コーポレーション)は愛知県にそれぞれ本社を置いています。この3県の1人当たりの年間ラーメン外食費(総務省家計調査2013)をみると、埼玉県が5834円、千葉県が5714円、愛知県が5782円。ちなみに、全国平均が5492円なので、やや多いくらいで、“本場”とは言えません。来来亭の本社は滋賀県なのですが、ここのラーメン外食費は4026円とかなり低い。

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