本連載は、本田哲也、田端信太郎著、書籍『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋、編集しています。
映画『アナと雪の女王』は、なぜ1000万人を動かしたのか?
LINEは、なぜ4億ユーザーの心をつかんだのか?
誤発注されたプリンは、なぜ完売したのか?
インターネットの普及などにより流通する情報量が爆発的に増える一方、生活者はネットやHDDレコーダーなどを活用し、自分で情報を選択するようになっています。そんななか、旧来のマス広告やメディア露出では、昨今、人は動かなくなっています。
大々的な広告キャンペーンやメディア展開をせずに人を動かすことに成功した事例を、1000人、1万人……、1億人、10億人と、スケールごとに分析。生協のプリン誤発注からアナと雪の女王、LINEまで、そのヒットの秘密を探っていきます。
広告・メディア業界人はもちろん、企業経営者、マーケティング担当者も必読の一冊です。
スタジオジブリのアニメ映画『天空の城ラピュタ』(※1)がテレビで放送されるたび、ネットでは「バルス」と一斉に書き込む“祭り”が発生する。この「バルス」は作品の終盤で主人公たちが唱える滅びの呪文。同時多発的にユーザーが書き込むことで、サーバーに急激に負荷がかかりダウンするという、文字どおり“滅び”をもたらすフレーズとして注目を集めた。
地上波でのテレビ放送が決まると、ネット上で「バルス」にまつわるネタが飛び交うようになり、当日、リアルタイムで番組を見ながら「バルス」とつぶやき、サーバーをダウンさせる。この一連の流れが再放送のたびに繰り返され、ネットで見かけただけの人が便乗し、輪が広がっていく。バルス祭りに参加した人に聞くと、「『バルス』とつぶやいた瞬間の一体感が楽しかった」「サーバーがダウンするのか、持ちこたえるのかハラハラしながら見守るのがスリリング」などといった感想が寄せられた。2011年12年にはTwitterにおける秒間ツイート数2万5088に達し、世界新記録として認定。世界記録を確立するという、新たな楽しみが提示された。
さらに2013年の放映時は“バルス祭り”をプロモーションに利用するネット企業が現れる。動画サイト「ニコニコ動画」は「バルス祭りニコニコ会場」特設サイトを設置。同作品の放送に合わせ、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏らが出演する実況番組を放送するとともに、Twitterでの「バルス」ツイートを呼びかけた。押すだけで「バルス」と投稿できるボタンも登場。ヤフーはポータルトップに「バルス」ボタンを設置。ボタンを押すとヤフーの画面が崩壊を始めるという仕掛けだ。
Twitterの公式アカウントも「今回の『バルス』がどうなるのか楽しみです(サーバーが持ちこたえますように!)」とツイートし、ネットユーザーを盛り上げた。
放送当日、プレイステーションやアマゾン、ケンタッキーフライドチキンなど企業の公式アカウント、中川翔子や眞鍋かをり、田村淳ら有名人も次々と「バルス」とつぶやいた。
田中将大(元・東北楽天ゴールデンイーグルス、現・NYヤンキース)は「見てないけど、バルス」「そもそもバルスの意味を知らないw」とツイート。作品を知らないまま、祭りに便乗する人々も続出する。
その結果、投稿数は秒間14万3199ツイートにも上り、当時の世界記録だった新年の挨拶「あけおめ(あけましておめでとう)」(秒間3万3388投稿)を抜き去った。
ざっくり言うと……
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