ネット時代のマーケティング担当者に捧ぐ、ソーシャル海の泳ぎ方郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年04月26日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 マーケターにつらい時代になった。

 例えば“ステマ”。受け手に宣伝だとさとられないように宣伝するステルス(見えない)マーケティング。クチコミサイトのやらせ事件が発覚して「ふざけんな」といった反応もあったが、★の数と実際の味やサービスの関係に「?」な店も多く、「やっぱりね」「そんなもんだろ」という冷めた見方が大勢を占めた。

 みんなの感想とは違うかもしれないが、筆者は「マーケティングも落ちたもんだ」と思った。

素人を動員したあげく、だませずにバレるとはね……

 売るための活動であるマーケティングは、そもそもステマと言えなくもない。バレるかバレないかはプロが作り上げる虚像の完成度であり、それがブランドという蜃気楼を実体に見せて、AIDMA(アイドマ、広告宣伝での消費者の心の動き)という錬金術プロセスを完遂する。昔はやらせもプロの仕業だったのだ。

AIDMA(アイドマ):

ある商品を購入するまでの消費者の心の動きのモデル。Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の段階を踏むという。


 ところが「素人を動員して、だませずにバレる」とは……。ずいぶん安っぽくなったもんだ。まあ分からなくはない。素人も玄人も全員参加、リアルもバーチャルも入り乱れて打ち手が複雑になった。仕掛けても“調べあげて”ステマを見抜く。

 広告もつらい。“神売れランキング”も“今すぐ愛される”といった女性誌のコピーも響かない。時代を変えた「おいしい生活」や「恋は、遠い日の花火ではない」などの名コピーが出てこないせいもあるが。販促イベントや新店舗オープンもつらい。仕掛けのイベントでウチワだけ盛り上がり、取材記者の「好意的な」記事でおしまいとかね。

おいしい生活:

1982年、西武百貨店の広告で使われたキャッチコピー。作者は糸井重里さん

恋は、遠い日の花火ではない。Old is New.:

1994年、サントリーウイスキーオールドのCMで使われたキャッチコピー。作者は小野田隆雄さん


 眼前にあるのはソーシャルという魔の海だ。そこでは「いいね!」を瞬時に広めてくれる一方、「なにそれ」も波紋で広まる。主役はネットを俊敏に泳ぎまわる消費者であり、ライターもマーケターも顔色をおうかがいしている。

 まさに「マーケターはつらいよ」。消費者の主役ぶりをWebマーケティングから見てみよう。

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