医療、文教、店舗 法人デスクトップPCに活路──レノボ、容積1リットルの超小型PC超小型+多目的、特定業務分野へ注力

» 2014年09月25日 19時00分 公開
[岩城俊介,Business Media 誠]

 スマートデバイスの普及にともない、オフィス向けPCの利用シーンがこれまでに増して多様化している。

 オフィス向けPC、特に一般社員が執務室で使うPCは、2000年代前半までのセパレートデスクトップタイプから、2014年現在はノートPCタイプへ主流が移った。省スペースと省電力性に加え、モバイルデータ通信環境の整備が相まって、移動先、移動中でも活動するための可搬性やバッテリー動作性能も高まった。2011年の東日本大震災にともなう節電意識の高まりも、デスクトップタイプからノートタイプ、あるいはタブレット兼用タイプへの移行に拍車をかけた。

 では、デスクトップタイプの法人需要はなくなったのか。そうではない。例えば、医療、店舗、開発、文教など、特定業務分野の特化したニーズと適合することで、法人デスクトップPC市場は2017年まで安定して推移するとみられている。

photo IDC調べでは、法人向けデスクトップPCの出荷台数は、2017年まで安定して推移、さらに本体の小型化傾向が進む予測されている

 需要確保のカギは、超小型化と多様性。デスクトップタイプへの法人ニーズは、本体とディスプレイを別体管理できること、業務に沿って拡張、変更できることが上位に挙がる。PC本体とディスプレイは運用サイクルが異なる。また、設置する場所に応じて画面表示の手段を変えることもある。ディスプレイ一体型デスクトップが法人ニーズに合わない例が多いのは、やや長いスパンで製品の運用を考え、多目的化も想定するためという。

手のひらサイズのデスクトップPC、法人ニーズに沿った“一体型”キットも

 レノボ・ジャパンは9月25日、法人向けデスクトップPCの新モデル「ThinkCentre M53 Tiny/M83 Tiny」およびPC本体をドッキングできる23インチ液晶ディスプレイ/ドッキングステーション「ThinkCentre Tiny-In-One 23」を発表。同日より販売を開始した。

photo 法人向け超小型デスクトップPC「ThinkCentre M53 Tiny」(写真右)

 ポイントは「容積1リットルの超小型サイズ、設置場所の柔軟性」「利用シーンに合わせて用意する多彩な周辺機器」「PCとしてのパフォーマンス」を兼ねること。既存モデルM93p Tiny(Intel vPro対応)、M73 Tiny(標準モデル)に加え、今回投入する「M83 Tiny」(HDDヘッド退避システム、3画面出力対応の高性能モデル)と「M53 Tiny」(低廉CPU搭載の標準モデル)により、全4モデルに拡充。業務内容や導入シーンに応じてOS(Windows 7 Professionalも選択可能)、CPU、メモリ容量、ストレージ(128GバイトSSDなども選択可能)などの構成カスタマイズも受け付ける。

photo 容積1リットルの小型ボディを特徴とする「ThinkCenter Tiny」シリーズ。小型、豊富な周辺機器、パフォーマンスをポイントに、医療、文教、店舗といった特定業務への導入を見込む
photo 登場2年で約220万台を出荷した「ThinkCenter Tiny」。最近は米国を中心に需要が高まっている。本体背面設置キットやディスプレイアームなど、一般執務室向け以外に、サテライトオフィス、会議室、工場、店舗、医療の現場、教室など業種別ニーズをカバーする周辺機器を豊富に用意したのも米国などで受け入れられた理由と話す

 M83 Tinyは過酷な現場などへの導入を想定した「HDDアクティブプロテクションシステム」(振動の察知により、HDDアクセスを回避して記録エラーなどを防ぐ機能)を、また、すべてのモデルでUSBポートの機能を制御する「Smart USB Protection」、離席自動ロック機能「Bluetooth Lock」を利用できるようにした。Smart USB Protectionは、キーボードとマウスのみ使用可能、ほかのUSBデバイス(USBメモリやUSB HDDなど)は完全に使用不可、あるいは書き込みのみ不可といったセキュリティ性を高める管理をBIOSレベルで行える。Bluetooth Lockは、所持するBluetooth搭載スマホをPCロックの鍵とし、離席すると自動でPCをロックするよう制御できる。

photo 普段の操作性は損ねず、意図しないUSBメモリ経由での情報漏えいを防げる「Smart USB Protection」機能を備える

 「ThinkCentre Tiny-In-One 23」は、超小型ボディのThinkCentre Tinyとの併用を意識した液晶ディスプレイ付きドッキングステーション──“モジュラーコンセプト”という概念を取り入れた。省スペース、省電力、高パフォーマンス、高い作業性、カスタマイズ性、導入の柔軟性、製品ライフサイクルの最適化。これまで1台ではカバーできなかった需要を満たす法人PCのあり方として、細かい法人ニーズを改めて掘り起こすのが狙いだ。

 本体の見た目は普通の液晶ディスプレイ。ただ、背面にPC本体や高額ドライブを入れるスロットを設け、合体して1台のオールインワンPCに仕立てられる。オールインワンPCのデメリットである、本体とディスプレイの製品サイクルの違い、整備性、拡張性を補い、利便性や拡張性導入・ランニングコストを削減できる効果をうたう。

photo デスクトップPCの新提案「ThinkCentre Tiny-In-One 23」。ディスプレイ背面スロットへPC本体を収納し、液晶一体型PC化できる。省スペースで手軽な液晶一体型PCと、製品サイクルの違いを補える分離型デスクトップPCのいいとこ取りをした構成だ
photo 超小型ボディと拡張性、セキュリティ性の高さなどを生かし、医療、文教、店舗、CAD/CAM(開発)従事者といった特定業務分野で需要が高まっている。PC、ディスプレイ、操作デバイス、バッテリーを一体化したエルゴトロン「StyleViw24 LCDカート」(写真)など、診察室における省スペースソリューションの提供に寄与する
photo PC POSを運用する店舗向けの事例

 「デスクトップタイプはなくなると言われていたが、そうではなかった。確かに個人向けは減少傾向にある。ただ、法人市場は今後数年安定して推移すると予測している。特に特定業務分野の需要、形態ではより小型化への需要が高まっている。レノボの場合、当初は設置スペースに限りがある日本市場で売上を伸ばしていたが、最近は米国市場を中心にグローバルで超小型デスクトップの需要が増えてきた。超小型デスクトップシリーズの販売比率は(レノボの全シリーズのうち)35%まで達した。今後、法人/特定業務向けデスクトップPCは、超小型とエコシステムを軸にグローバルで拡販していく」(レノボ・ジャパン ThinkCentre製品担当の大谷光義氏)

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