「厳罰化」で解決できるのか 企業の秘密漏えい問題窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2014年11月25日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

気になるのは「拡大解釈」

 今さら言うまでもないが、中国や韓国には日本企業の製品をパクったものが多い。そういう意味では、この「厳罰化」の流れは喜ばしいことであるし、パクられ放題の現状を鑑(かんが)みれば、「遅過ぎたくらい」という感じもする。

 だが、不安がないわけでもない。まず、ひとつはどんなに法を厳しくしようとも、そんなもんまったく意に介さない「アウトロー」の存在だ。例えば、中国なんかが分かりやすい。彼らの国で抗インフル薬として人民解放軍に使用を認めた「JK-05」という薬がある。この薬は、富士フイルムの子会社・富山化学工業が開発したもので、「エボラ出血熱」に効果があるといわれるアビガンと同一成分であることが、9月に行われた世界保健機関(WHO)の専門家会合後の記者会見で明らかになった。

 ここの国の人たちははかつて川崎重工から新幹線の技術をパクって「独自開発だ」なんて言い張って、米国で特許申請したりしている。ハナから遵法意識に欠けた人々に、「不正競争防止法」がうんたらかんたらと訴えたところで、果たしてどれだけの効果があるのか疑わしい。

 さらに、もうひとつ気にかかるのが、法が「乱発」されないかということだ。例えば、これまで重大な営業秘密にアクセスできた従業員をリストラしたとしよう。もちろん、企業としては秘密保持契約なんかを結ぶが、ノウハウなどが中国や韓国のライバル企業に流出しないとは限らない。現実にそういうケースは山ほどある。

 疑心暗鬼になった企業はどうするか。国益を守るために関与を強めた政府はどうするか。元従業員に対して先手をうって「未遂」をデッチ上げてライバル企業ともども潰しにかかる、なんてこともできなくはないのではないか。

 いや、そんなの考え過ぎだよ、と思うだろう。個人的にはそう思う。いくら日本企業の利益を守るためとはいえ、そんな強引な「拡大解釈」なんかするわけがない、と。ただ、「特定秘密保護法」のことがある。

 安倍さんが、国家の機密を漏らした「スパイ」を対象としたもので、一般の国民にはまったく関係ないといくら繰り返したところで、テレビや新聞はハナから疑っており、「公務員からの情報を得て不正を追及するジャーナリストが投獄される」などと繰り返し警鐘を鳴らしている。

 米国がテロ対策を口実にスパイ防止法を乱発していることからも分かるように、「国益を守るため」という大義名分のある法律は恣意的に使われがちだからだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.