「厳罰化」で解決できるのか 企業の秘密漏えい問題窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年11月25日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 11月24日付けの日経新聞一面で(参照リンク)、経済産業省が不正競争防止法を見直すなんて話が出ていた。企業の営業秘密を外国企業に漏らした者に対して罰則を強化するというもので、現行の懲役10年以下が15年以下、個人の罰金の上限も1000万から5000万に引き上げるんだとか。

 こういう話が出てきた背景には近年、日本企業の技術やら機密情報が海外企業、特に中国や韓国に流出するケースが増えてきていることにある。例えば、東芝の提携先であるサンディスク社の元技術者が、スマートフォンなどのデータ保存に使う記憶用半導体「NAND型フラッシュメモリ」の製造に係る技術を持ち出して、韓国の半導体メーカーに売り飛ばしてしまった事件が有名だ。

 愛国心あふれる方たちからは、「国益を損ねる売国奴にはもっと厳しい罰を与えろ」とか、「秘密を漏らすようにそそのかす中韓側にもきついお仕置きをすべきだ」なんて怒りの声が聞こえてきそうだが、今回の見直し案ではそのあたりもしっかりとフォローされる。

 まず、これまでは秘密情報を不正に盗み出して流用した事実が発覚した時点で、不正競争防止法違反の対象となるという流れなのだが、これからは「盗もうとした痕跡」があるだけでも後ろに手がまわる。要するに、「未遂罪」が導入されるのだ。

 さらに、対象者も広げる。これまでは秘密を盗み出した人間と、それを受けとった人間(2次取得者)だけが対象だったのが、3次取得者、4次取得者にも芋づる式に罰則が及ぶようにする。新日鉄住金が26年かけて開発した特殊鋼板の製造方法を従業員が、韓国の鉄鋼最大手「ポスコ」という企業に漏えいしたとして裁判になっているのだが、実はその技術がポスコから「宝山鉄鋼」という中国企業にも漏えいしているという。

 このような海外の3次取得者にまで情報が漏えいした場合にもフォローできるようにしたというわけだ。

不正競争防止法は見直されるのか(写真はイメージです)
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