ベルギーフライドポテト専門店という“ニッチ戦略”は成功するか「世界遺産」級の味を日本でも(2/3 ページ)

» 2015年01月30日 07時45分 公開
[伏見学,Business Media 誠]

消費者の声を基に商品開発

 2014年初頭、フライドポテト専門店の開業に向けたプロジェクトがスタートした。会社名、店舗名、商品名、Webサイトのドメイン名などをすべて「POMMEKE(ポムケ)」に統一し、8月に法人化した。

ロゴの下には“the real belgian fries”の文字が(同社サイトより) ロゴの下には“the real belgian fries”の文字が(同社サイトより)

 並行して店舗の場所を探すも、こちらは難航した。路面でそれほど広くない物件を求めていたわけだが、こうした条件の物件はコスト抑制などの理由から今人気が高く、良い物件は大手企業へ先に情報が流れてしまうそうだ。結局、約5カ月かかって外苑前の物件と契約することとなった。外苑前を選んだ理由は、外国人が比較的多いエリアであることと、表参道から徒歩圏内であるため、そこからの顧客流入も期待できたからである。

 しかし、何よりも力を入れたのが商品開発である。POMMEKEのロゴ下にも書かれているように、本場ベルギーのフライドポテトの再現にとにかくこだわった。そこで、ベルギーとフランスの国境近くにある、世界トップクラスの生産能力を持つポテト専門工場と契約し、オリジナル商品の開発を進めた。原材料のじゃがいもはベルギーフライドポテトの“王道”といえるビンチェという品種で、その中でも特に品質の高いものを厳選して使用するようにした。

 POMMEKEではこのじゃがいもをほぼ丸ごと(約97%)使い、ベルギーの伝統的な形状である12ミリメートル四方の太さにカットする。ベルギーの工場でカットされたポテトは20トン(約1万食分)単位で日本に輸送され、現在は埼玉・三郷にある貯蔵庫から毎日店舗へ送られてくる。

 「この工場は受け入れ検査がとても厳しい。他国では質の劣るじゃがいもをフライドポテトにするのが一般的だが、ベルギーでは品質の高いじゃがいもこそがフライドポテトになるのだ」(ナイレン氏)

油切り作業の様子 油切り作業の様子

 さらに、独自に改良したのがフライドポテトの「保温性」である。商品開発の過程で試食会を行ったとき、消費者からは「テイクアウトして会社や自宅で食べるときも温かいほうが良い」という意見が多かった。その要望に応えるべく、料理長のサブロン氏と工場で何度も試行錯誤を繰り返した結果、店で提供してから約15分間は保温できるフライドポテトができあがった。これは一般的なフライドポテトと比べて倍の長さだという。

 もう1つ要望が多かったのが「ヘルシーさ」だった。「健康的なフライドポテトが食べたいという声があった。言うのは簡単だが、そもそも油で揚げるものなので厳しい要件」(ナイレン氏)だったが、ここまでやらないと東京で生き残れないという覚悟があった。

 そこで、まずは高温で短期間に2度揚げして、次に最低5回は油切り作業を行うことにした。これによって、脂っこさが減り、素手で食べても油が付かず、胃もたれしにくいフライドポテトになった。女性も主要なターゲット層の1つだったので、彼女たちが一人でも食べられる商品が好ましかった。

 商品開発には1年強の時間を費やして、POMMEKEオリジナルのフライドポテトが完成した。

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