これを打開する手段の1つとして、近年、活用され始めているのが「ニューロマーケティング調査」である。ニューロマーケティング調査とは脳波を計測することによって、定量調査ではつかむことができない人の無自覚から生じる行動原理や裏ニーズを、脳の活動から明らかにする調査方法である。脳科学の計測技術が進化し精度が飛躍的に向上したことに加え、実験費用も低く抑えられてきたことで、使える分析手法として注目を集めるようになった。
筆者が勤めるADK(アサツーディ・ケイ)でも、さまざまな機会でニューロマーケティング調査を実施しているが、その中からある驚くべき事実が明らかになった。数年前、大日本印刷さんと共同で、基礎化粧品、通販の健康食品、そして金融(投資)について、アンケート調査(定量調査)とニューロマーケティング調査の2つを実施したところ、基礎化粧品や通販の健康食品はアンケート調査とニューロマーケティング調査の結果がほぼ一致。アンケートで高い数値を示した答えは、脳波測定でも高い数値を示した。
ところが、お金をテーマに調査したところ、アンケートと脳渡測定では大きく異なる結果が出たのである。我々もあらかじめ、2つの調査結果にはある程度の開きが出るだろうと考えていたが、予想をはるかに超える“真逆”の結果に驚いた。
具体的な質問は「投資運用をする際に何に価値をおくか」だったが、アンケート調査によると「元本が保証されている」「業界最安値でお得」「不況に強く、安定感がある」「投資によって企業育成に貢献できる」という答えが上位を占めた。非常に冷静で理性的な答えと言えるだろう。一方、脳波測定で上位を占めた答えを見ると、「優越感が持てる」「夢をかなえられる」「毎日によい刺激がある」といった、成功欲や自分を突き動かす、前向き、能動的な答えが多く上がった。つまり、“1人の人間の中に、両極端の心理が同居している”という事実が明らかになったのである。
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