優等生の不良ごっこ? スポーツカー? 付加価値?――トヨタがG'sで狙うもの池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2015年02月27日 11時00分 公開
[池田直渡,Business Media 誠]

G'sプリウスはどのように強化してあるか?

 G'sプリウスの床下写真を見てほしい。4種類、8枚の鉄板をボルト止めし、両サイドの敷居の溶接個所を増やしている。金に糸目をつけない徹底的な対策とまでは言えないのだが、要所要所を的確に押さえた補強で、これが見事に効いている。順番に見ていこう。

G'sプリウス
G'sプリウス側面
G'sプリウス床下写真

フロントサスペンションメンバー前端ブレース

 フロントサスペンションの前側支持点を左右でつなぐことでサスペンションの足場となるフレームを強化している。前後方向の補強板は中央部のたわみ止めと思われる。本当はI型の鉄板ではなくV型にしてフロント両サイドへ筋交い(すじかい)として入れれば、より強度は上がったろうが、ミッションケースとオイルパンが邪魔になる。次善の策として前後をつないだのだと思われる。

スタビライザーブラケット大型一体構造

 この補強の重要ポイントの一つ。フロントサスペンションの後ろ側にある、取り付け点の位置決めを強化している。補強のために取り付けられた部品のうち、構造強度を上げるためのプレスがもっとも明確に加えられている部品でこれがフロント部分の強化の柱になる。

フロアセンターブレース

 これは、ボディ中央部のねじれ対策だ。ボディの変形は、当然4つのタイヤからの何らかの入力によって起こる。前輪の左右、後輪の左右それぞれをいくら固めても、その間がぐにゃぐにゃでは効果が半減する。それを強化するための対策がこれだ。排気管の下を左右につなぐ短い板は、ボディ補強の定番中の定番。クルマの背骨となるセンタートンネルはU字断面を持ち、下に向かって解放されている。当然Uの字は左右に開いたりねじれたりするので、ここを止めればフレームのポテンシャルが上がる。またそこから斜めに後方へ延びる補強板もボディの一番弱い部分にかかる筋交いとして効いている。また敷居の後端を弧を描いてつなぐパーツの収まりはすばらしい。背後にある黒いプラスチックの部品は燃料タンクだが、この燃料タンクにあらかじめ補強材を通すための逃げが作ってある。こんなことができるのは、メーカーだけである。

ロッカーフランジスポット溶接打点追加

 敷居部分は、スポット溶接の数を増やして対応している。おそらく5センチメートル間隔程度まで詰めてあるのではないだろうか。電気溶接では溶接点を近づけ過ぎると、近隣の溶接点を迂回(うかい)して電気がリークしてしまい、溶接ができなくなる。一般にその限界は、5センチメートルと言われている。

リヤバンパーリインフォース

 リヤバンパーの補強は、ボディ後端のねじれに効く。過去のハイパフォーマンスカーにおいて、ここに強化パーツを入れることは結構多く、効果があることはそれらの前例から容易に想像できる。

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