裁判官は優秀なはずなのに、なぜ“トンデモ判決”が出てくるのかああ、絶望(後編)(4/5 ページ)

» 2015年03月03日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

“コピペ判決”も出てきた

ジャーナリストの烏賀陽弘道氏

瀬木: 若手の裁判官の中には判決文を丸移しする……いわゆる“コピペ判決”をやる人もいるんですよ。

烏賀陽: 他の判決をコピペして、固有名詞だけ変えるということですか?

瀬木: そうではありません。民事訴訟の場合、「口頭弁論は、書面で準備しなければならない」と定められていて、弁護士は準備書面を用意しているんですよね。訴訟法の建前では当事者は口頭で主張しなければいけないのですが、それは難しい。複雑な内容を正確に語るのは難しいので、事前に書面が準備されている。本来、裁判官は「準備書面を読んで、事実関係を整理し、理由と結論を書く」べきです。しかし、きちんとした判決を書けない若手裁判官が、準備書面をコピペして判決文にしてしまうわけですよ。

烏賀陽: いわば弁護士が判決を代筆している。

瀬木: 実質そうなりますね。弁護士の中には、そうした行動を見越して、なるべく判決文に近い形で準備書面を書く人もいるそうです。

烏賀陽: ははは。そうなると、判決を書く時に「こっちの弁護士の文面のほうが判決に近く書けているので、こっちに有利な判決にしよう」とはなりませんか?

瀬木: さすがにそこまではしないでしょう。ただ、中には準備書面を読み比べて、勝ちそうなほうをコピペしたのではないか? と感じられるような判決がありましたね。

烏賀陽: 瀬木さんの話を聞いていると、報道の世界に長くいる人間として情けない気持ちになります。裁判所の中には構造的な問題がこれほどたくさんあるのに、それが報道されることはほとんどない。例えば、記者が最高裁判事を正面からまじめに取材して、報じることは難しいのでしょうか?

瀬木: 不可能ですね。

烏賀陽: それはなぜでしょうか?

瀬木: 最高裁というのは、日本の権力の中枢の1つ。最高裁判事へのインタビューは、広報を通さなければできません。広報を通して取材して記事を書いたとしても、上層部にとってそんなものは痛くも痒(かゆ)くもない。なぜなら上層部は裁判所のことを批判するような発言なんてしませんので、いわゆる“お墨付き”記事になりますよ。

 裁判所から発信したリリースをベースに書いた記事なんて、痛くも痒くもどころか「いや、ありがたい」と感じているはず。

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