迫るマイナンバー開始 企業は何をすればいい?あと半年(4/4 ページ)

» 2015年07月02日 08時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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なりすましを防止

 このようにマイナンバーの取得業務の下では、厳格な本人確認が義務化されている。事業者としては、最初の対応として、この業務を滞りなく実施することが求められるのだが、「長年同じ釜の飯を食ってきた社員の本人確認をなぜそこまで厳格に実施する必要があるのか」という思いもあろう。

 ただ、2012年6月に逮捕された「オウム逃亡犯最後の1人」と言われた高橋克也の例を思い出してほしい。高橋は、潜伏期間中、実在する人物の住民票を悪用し、川崎市の建設会社に勤務していた。つまり、長年他人になりすましていたのだ。マイナンバーは、将来生活のあらゆる場面で本人であることを証明する社会インフラになるだけに、気心知れた従業員であっても、制度設計上、厳格な本人確認が要求されることを理解しておきたい。

 従業員や扶養家族のマイナンバーの取得は、いつまでに実施しなければならないのだろうか。2016年1月1日以降、関係当局に提出する書類にマイナンバーを記載しなければならないとされている。ただ、書類の中には1月1日よりもっと後に提出すればよいものもある。従業員のマイナンバーもそれに併せて順次取得すればよいであろう。このあたりはケースバイケースなので、事業者側で書類の提出時期を考慮しながらあらかじめスケジュールを立てるようにしたい。

 ここまで、企業が最初に直面するマイナンバーの取得業務について解説した。冒頭の梅屋氏のコメントにもあるように、企業として実施しなければならない対応を突き詰めれば、上記の方法で取得した従業員等のマイナンバーを関係各所に提出する必要書類に記載するだけのことなのだ。

マイナンバーをどう管理するのか

 ただ、税や保険に関する書類を関係機関に提出するたびに従業員からマイナンバーを聞き取っていたのでは大変だ。企業としては、当然、提供を受けたマイナンバーを保管し、必要なときに取り出して利用できるようにしたい。しかし、個人情報であるマイナンバーを手元に持つということは、漏えいなどのリスクを抱え込むことでもある。

 そこで法律は「安全管理措置」という名称で、事業者に対し取得したマイナンバーの取り扱いに関する注意事項をガイドラインで定めている。その詳細は、またの機会に譲るとして、簡単に言うと、(1)組織的な管理体制を整え(2)取り扱い担当者を決めて教育を行うと同時に(3)漏洩しないように保管場所に施錠し、担当者しか扱えないようにすることが求められている。

 また、パソコンやシステムなどデジタル上で管理する場合も、認証等、アクセス制御の措置を講じなければならない、としている。「うちは社員が少ないので、共有のパソコンにExcelに記載して保管しています」というのは完全にアウトだ。担当者を決めるとともに、セキュリティ機能が施され、マイナンバーに対応した会計ソフトなどで管理しなければならない。

 いずれにしても、マイナンバーが何であるかを知り、企業が必要とされる措置を理解して実行することが大切なのだ。

著者プロフィール:山崎潤一郎(やまさき・じゅんいちろう)

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。プロデュースした音楽アルバム「全6時間のノンストップ勉強・作業用BGM - 集中と全力の101曲」は、iTunes Storeのクラシックジャンルで6カ月以上ベスト5をキープ中。


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