なかなかおさまらないせき――「しつこい風邪だな」と思っていたら、「百日ぜき」を疑ってみた方がいいかもしれない。百日ぜきとは、特有のけいれん性のせき(連続的にせきが出て、息を吸う時に笛の音のような音が出る)が続き、春から夏にかけて多くなるのが特徴だ。子どもや乳幼児がかかることが多かったが、2006年ごろから大人(20歳以上)の間で急増している。そして東京都の福祉保険局は5月22日、都内で大人を中心に百日ぜきが流行している、と発表したのだ。
都内にある小児科(150医療機関)からの報告によると、百日ぜきの患者数は1医療機関当たり0.07人。百日ぜきの集計が始まったのは1999年からで、0.07人という数字は過去最高、中でも八王子市では1.0人と警報レベル(大きな流行が発生または続いている状態)に達した。福祉保険局によると「百日ぜきは感染症なので、広がる可能性がある。八王子市の周辺エリアでは気を付けなければならない」と警鐘を鳴らしている。
せきが止まらない時、心掛ける3つのポイント
東京都が調査を始めた1999年、大人の百日ぜき発症率は、患者全体で5%にも満たなかったが、2007年は40%弱まで増え、2008年の5月18日時点では50%を超えている。これまで子どもや乳幼児を中心に感染してきた百日ぜきだが、なぜ大人の間で流行しているのだろうか。
大人の患者が増えている理由は「ワクチンの効果が低下したため」(福祉保険局)だ。百日ぜき対策として1968年から、DPT三種混合ワクチンの予防接種を始めた結果、患者数は大幅に減少した。「しかしワクチンの免疫効果は5〜10年ほど。そのためワクチンを接種していても百日ぜきを発症する人もいる」ということなのだ。
もしせきが止まらないと思ったら、「早めに医療機関で受診してほしい。治療は抗生物質の服用や対症療法(症状などを軽減することが目的の治療法)なので、薬を飲んでいる期間は安静にすることが大切」とのこと。
これまで会社内での大規模な発生は報告されていないが、集団発生の可能性はあるという。とにかくせきが止まらない(または出る)時には、3つのことを心掛けることがポイント。せき(くしゃみ含む)の症状があるときはマスクをする、せきをするときはティッシュなどで口や鼻を覆う、せきをするときは周りの人から顔をそむける――と基本的なマナーを守ることが重要だ。そして百日ぜきにかからないようにするには、マスクをするのが一番の予防だという。
百日ぜきの特徴
百日ぜきは、特有のけいれん性のせきを特徴とする急性気道感染症です。感染から約1週間(6〜20日)の潜伏期間を経て、風邪症状が続き(約2週間)、徐々にせきが強くなっていきます。その後、連続したせきの最後に大きく息を吸い込み、たんを出しておさまるという症状を繰り返します(約2〜3週間)。その後激しいせきは徐々におさまりますが、回復まで2〜3カ月かかることがあります。(東京都Webサイトより)
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