30代従業員に心の病が増えている企業――6割
働きざかりのビジネスパーソンが“うつ病”を患うケースが増えている。社会経済生産性本部の調べによると、心の病を患う従業員が「増加傾向」と回答した企業は56.1%、2年前の調査と比べ減少したが、依然として高い水準であることが分かった。
会社へ行く時間になると気分が悪くなる「出社拒否シンドローム」や「うつ病」など、ビジネスパーソンを襲う心の病にはさまざまな種類がある。警察庁の発表によると自殺した人の約18%はうつ病を患っており、そのうち「仕事の疲れ」「職場の人間関係」「失業」「倒産」など仕事に関係する要因が目立つという。
過去3年間の心の病の増減傾向を聞いたところ、56.1%の企業が「増加傾向にある」と回答していることが、社会経済生産性本部の調べで分かった。これまでの調査では、「増加傾向」と答えた企業の割合は2002年が48.9%、2004年が58.2%、2006年が61.5%と上昇しており、2年前、4年前よりも下がっている。「ひとまず止まった形となった。しかし心の病の『増加傾向』にある企業の割合は、依然として半数を超える高い水準」(社会経済生産性本部)としている。
年代別で見ると、最も多かったのは30代で59.9%、次いで40代が21.9%、10〜20代が10.8%、50代以上が3.0%。若い働き盛りの30代に心の病を患っている人が多いのは、職場での効率化や合理化などのしわ寄せがのしかかったり、成果主義などの過剰な競争が負担になっているのかもしれない。
社会経済生産性本部のメンタルヘルス研究所は第4回「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケートを実施した。全国の上場企業2368社を対象にアンケート用紙を郵送し、269社が回答(回収率11.4%)した。調査時期は4月。
心の病と職場環境の関係
心の病と職場環境に何らかの関係はあるのだろうか。ここ3年間の心の病の増減傾向と職場の状況変化を調べたところ、“人を育てる余裕が職場になくなってきている”“組織・職場とのつながりを感じにくくなってきている”“仕事の全体像や意味を考える余裕が職場になくなってきている”――この3つに変化がある企業は「心の病が増加傾向にある割合が高く、そうでない企業は、心の病が横ばいもしくは減少傾向にある割合が高い」(社会経済生産性本部)と分析した。
従業員の健康に力を入れている施策は「定期健康診断の完全実施」が最も多く71.7%、「メンタルヘルスに関する対策」(63.9%)、「定期健康診断の事後措置」(58.4%)と続いた。中でもメンタルヘルス対策をしている企業は、2002年の33.3%に比べ2倍近くなっている。
メンタルヘルス対策を通じ、企業はどのような状態になるのを期待しているのだろうか。最も多かったのは「不調者が早期に発見できる」で78.4%、次いで「不調者に適切な対応ができる」(71.0%)、「休職者の復職が適切に支援できる」(57.2%)、「従業員の活力が高まり、生産性が向上する」(51.7%)だった。
現在取り組んでいるメンタルヘルス対策が、どの程度の効果を挙げているのかを聞いたところ、「どちらとも言えない」(40.1%)、「まずまず効果が出ている」(38.7%)の回答率がほぼ同じ。次いで「あまり効果が出ていない」(16.0%)であった。
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