何のために投資をするのか?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編):分散投資特集(3/3 ページ)
投資をする際にどんな情報に注目しているだろうか? 「なんとなくいい企業だから」といった運に任せるのではなく、企業が上方修正を発表したときにマーケットの反応を見る」という山崎氏。そこからリターンを手にするチャンスがあるというが……?
今後の仕事は「金融商品を作ってみたい」「“善意の確信犯”になりたい」
――投資をすることによって、人間的な成長はあると思いますか?
山口 自分自身を振り返ってみると、まず株式投資をすることによって“人間のエゴ”を学びました。どれだけ自分のお金が殖やせるのだろうか? といったエゴが肥大化していきましたが、結局それは崩壊し、私は“寄付”を始めることにしたのです。お金を殖やしたいというエゴの塊のときには資産が減り、エゴがなくなれば、うまくいき始めた。
このほか投資をすることで、視野が広がりましたね。自分が投資したお金がどのように社会に流れていくのか。投資したお金がどのように使われていくのか。そういった点に注目するだけでも、世界観が変わってくると思います。
山崎 株式投資を始めると「自分の思ったようにはならないことが世の中にはあるんだ」ということを学ぶのではないでしょうか? これは大事なことで、なんとなく勉強してとりあえず就職した、という人は勉強や情報の価値を過大に評価する傾向があります。投資をする上で価値のある情報とは何か? その情報は社会にとってどれだけ役立っているのか? ということを考えるきっかけになるでしょう。
もう1つ、「自分の判断を絶えず疑わなければならない」ということが身に付くはず。投資というゲームは、ほかの参加者を出し抜こうとするものなので、あまり品がよくない。だけどそのゲームを戦っていく中で、得られるものもあります。例えば自分が出し抜く側にいるつもりでも、実は出し抜かれる側になるかもしれない、というようなことも学ぶことができる。現実は簡単ではないし、だからこそ面白い。それは自分と他人を絶えず比較しなければならないため、とても難しい作業になります。マーケットに参加し続けることは、自分をトレーニングすることができるでしょう。
――これまで株式投資の世界で活躍されてきましたが、今後はどんな仕事をしてみたいですか?
山口 私は「金融商品を作ってみたい」という思いがあります。私の理想とする金融商品とはグリコのおまけのようなもの。お菓子とおまけがセットになっているように、リターンと人の思いがセットになっているような金融商品を作ってみたい。
実はいま、ある大学の先生と電気自動車の製作に携わっています。自動車を作るのにはお金がかかりますが、その大学の先生は「お金だけを集めるのは止めて欲しい」と言ってます。しかし「自動車を作りたい」という思いだけではお金は集まりません。多くの人が電気自動車というものに共感してもらうことで、どこまでお金を集めることができるのか? そこが肝だと考えています。単純なリターンだけではなく、社会に貢献しているという金融商品を作ってみたいのです。
山崎 私の仕事のモットーは、正しくて面白いことを伝えるということ。マーケットについて正しいことを伝えていかないと面白くないし、正しいことを探っていくのも面白い。それは本を書くことかもしれないし、人に伝えていくことかもしれない。「ポートフォリオはこうしたらいいよ」といったレポートにも興味があります。そうしたレポートは無料にして、自由に使ってもらうのがいいでしょう。運用サービスの無駄な価格を破壊し、いろいろなことを教えていければな、とも思っています。
いわば“善意の確信犯”。同業他社から「そんなことまで教えるのか! もったいないじゃないか!」といった批判があれば、マーケットの世界がレベルアップできるかもしれない。それだけで私は満足です。
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