中古住宅を再生――リノベーションのススメ:大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(2/2 ページ)
サブプライムローン問題の余波で不動産会社がバタバタと潰れている中、狙い目となっているのが中古住宅。空き家率が高くなっていることから、中古住宅市場にはお買い得物件があふれているのだ。こうした中古住宅に大規模な改修工事を施すリノベーションに注目が集まっている。
リフォームとリノベーションの違い
「リノベーションってリフォームとどう違うの?」という質問がよくある。詳しくはHOME'S CLUBの特集を読んでいただければ幸いだが、ここではかいつまんで説明する。
一般的には「家族が増えたから、もう1つ部屋を作ろう」「内装が汚れてきたからキレイにしよう」など、住まい(ハード)に関する問題や弊害を一掃することを目的に増改築・模様替えなどの工事を施すことを「リフォーム」と呼ぶ。
それに対し、既存の住宅や中古物件に新たな価値を与えて、そこに住む人のライフスタイル(ソフト)まで考えた住空間を提供することを「リノベーション」と呼ぶ傾向にある。つまり「時代の変化やライフスタイルに合わせ、大規模な全面リフォームにより中古物件を再生すること」とHOME'Sでは定義している。
間取りや水回りの変更などを含む大規模な改修工事を施し、時代や居住者のライフスタイルに合わなくなった物件を初期性能以上に価値を向上させるのがリノベーション。うまくすると資産価値まで高まる可能性がある、というわけだ。
レディメイドもオーダーメイドも
今回は入門として、リノベーションといってもいろいろあるということをお伝えして結びとしたい。
既存の住戸物件をリノベーション
高度成長期に大量に建てられたマンションなどを、部屋の壁を取っ払ったりキッチンの位置を変えたりして、大胆にリノベーションしたレディメイドの物件が昨今たくさん出回るようになった。
例えばHOME'Sのリノベーションマンション特集でも、掲載物件数が常時2000件を超えるなど充実しており、選びやすくなっている。大企業の寮をリノベーションした例では、食堂などの設備をつぶさずに共有スペースにするなどして、もとを活かしたデザイナーズ物件もある。
コンバージョン
もともとオフィスビルだったものを住戸用に転換(コンバージョン)したもので、もともとリノベーションはこの分野から火がついた。もとがオフィスだけに、天井が高かったり広めの間取りに仕切りなおせたりと面白いことがやりやすい。
オーダーメイド
リノベーションが得意な設計事務所などに依頼すると、オーダーメイドで要望を聞いてくれる。そればかりか、希望のライフスタイルに合わせた中古物件選びから手伝ってくれる会社もある。名のある設計事務所に依頼するとプレミアムが付くこともあるので、リノベーションの醍醐味を最も味わえるパターンである。
土地を買って注文住宅を建てることのできる人しか味わえないのに近い満足を、オーダーメイドなら比較的ローコストで得られるのも特徴だろう。
富裕層の場合は……
ちなみにリノベーション業界の重鎮いわく、富裕層は数億する超高層マンションの広い部屋を新築で買って、さらに億単位のお金をかけてとんでもないリノベーションをしている、とのことだ。金融系外資のお金持ち外国人がたまにそういうことをしているらしい。
団塊ジュニア世代の方には、マンション購入を検討している人も多いはず。しかし世の中には、新築マンションだけではなく、こういった再生物件もあるということを知っていただければ幸いだ。
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