省エネのための3つの循環利用とは?――ハウステンボス(後編):ECO建築探訪(2/2 ページ)
長崎県のハウステンボスでは、環境負荷を低くすると同時に、運営コストも下げるという課題に挑戦している。課題を解決するため、施設のインフラを整備して「熱」「水」「廃棄物」の循環利用を行っているのだ。
「熱」「水」「廃棄物」の循環利用
省エネルギー委員会では経済性や環境性を向上させるため、具体的にどのような試みをしているのだろうか。そのキーワードとなるのは、「循環利用」だ。「熱」「水」「廃棄物」の3つを循環利用して、省エネを実現しているのだ。
「熱」の循環利用
ハウステンボスで最も電気やガスなどのエネルギーを使っているのは、冷暖房や給湯設備だ。
ハウステンボスでは熱を有効活用するため、「コージェネレーション」と呼ばれる熱電併給システムを施設内に設置している。通常の発電機では、ガスを燃焼させた際の排熱は大気に放出しているが、コージェネレーションでは排熱を冷暖房や給湯のためのエネルギーとして活用。熱を循環利用することで、高効率なエネルギー供給を実現しているのだ。
「水」の循環利用
ハウステンボスでは洗面水、厨房水、トイレ洗浄水、植栽散水などさまざまな用途で水が消費されている。
しかし、すべての水に同じ水質が求められているわけではない。人の口に入る可能性がある厨房水や洗面水などには水道水レベルの安全な水質が求められている一方、トイレ洗浄水などにはそれほど高い水質は要求されない。
そこでハウステンボスでは、人の口に入らない水については、場内の排水を浄化処理した水を再使用することで節水に努めている。
「廃棄物」の循環利用
152万平方キロメートルの広さを誇るハウステンボスでは、場内施設から出るごみ(特に生ごみ)と森林から発生する落ち葉をどのように処理するかが重要な課題となっている。
通常のテーマパークでは、廃棄物処理業者に費用を払ってごみの収集を委託していることが多い。ごみはコンテナ車などで処理場まで運搬されるため、ごみの排出量が多ければ多いほど運搬頻度が高くなる。すると、処分費用がかさむだけでなく、車両から排出される排気ガスも増えるため環境に良くない。
そこで、ハウステンボスでは施設内で排出される生ごみや落ち葉などを堆肥化するシステムを導入。多くの植物の肥料とすることで、経済性・環境性を向上させている。
環境の変化でコストメリットも変わる
ハウステンボスでの循環利用システムについて紹介してきたが、これらの試みによって環境負荷を抑えるだけでなく、光熱水費や肥料代も大きく削減できる。
しかし、高効率なシステムであっても、経済環境の変化でコストメリットは変動する。例えば、コージェネレーションはガスを燃やして発電しているため、原油高騰でガス価格も上昇している現状では、いくら高効率なシステムであってもコストメリットは薄れている。したがって、コージェネレーションをどういう状況でどれくらい運転するとコストメリットはどう変化するのかといったことは、常に検討していかなければならない。
省エネルギー委員会では常にこの点は検討しており、最適な運転プランに随時変更し、経済メリットを最大限享受できるように工夫している。これはコージェネレーションだけでなく、水や廃棄物の循環利用についても同様。どれだけ効率的に循環利用しているかを定期的にチェックしている。
当たり前のことではあるが、省エネは一時の努力では終わらない。継続的に検討していかなければならない問題なのである。
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