家の裏にスーパー、でも買い物はネットで:変わる消費者心理と小売ビジネス(3/3 ページ)
ネットスーパーや電子チラシが好調だ。生活必需品の高騰で買い控え傾向の強い消費者は、その購買意欲を店舗ではなくネット上の商品に向けている。低迷する小売業界では、こうした消費者心理を巧みにかぎ分け、新たなビジネスチャンスとして事業を展開する必要がありそうだ。
クリック率はネット広告の数十倍、QRコードの強み生かす
チラシやポスターなど、紙メディアとQRコードを融合させて、購買を喚起するサービスもある。
「紙媒体は決してなくならない。紙に印字できるという特性を使って広告効果を高める」。QRコードサービス「Q転直Pa」を提供するアイディーエスのITソリューション営業部で部長を務める泉谷章氏は、従来の紙媒体を生かせる同サービスに自信をのぞかせる。
Q転直Paは、URL情報が含まれたQRコードを携帯電話で読み取ると、PCに情報が転送されるサービス。モバイルサイトに加え、関連するWebサイトのURLをユーザーが登録したメールアドレス宛に自動で送信する。
オフィス家具・文具を販売するPLUSは、同サービスをキャンペーンに採用した。Q転直Paを印字した2200枚のパンフレットを用意したところ、QRコードを読み込まれたのは45件(全体の2%)、その後モバイルサイトが閲覧されたのは44件(同2%)だった。平均0.1%前後のクリック率とされるインターネット広告と比べても、その効果は高い。
「SEM(検索エンジンマーケティング)対策でキーワードを検索結果の上位に出す施策の100分の1程度」(泉谷氏)にコストを抑えられるという。既に中日新聞は同サービスを使い、120万部もの一面広告にQ転直Paを打ち出した。
「QRコードの利用者の伸び悩みと、サービスの認知度の低さ」(泉谷氏)が当面の課題だ。同社は企業向けサービスだったQ転直Paを、個人向けに無償提供し始めた。名刺や同窓会の案内状などにQ転直Paを使ってもらい、まずは認知度の拡大につなげていく。
消費者の購買行動の減衰が鮮明になりつつある中、ネットスーパーや電子チラシは「手間をかけずに質の良い製品を安く購入したい」というユーザーの心理をうまくつかみ取り、急成長を遂げている。
小売業界を取り巻く低迷。それを打ち破るには、企業はネット戦略の拡充といった情報システム部門の強化をエンジンにして、店舗経営だけを強化するという従来型のビジネスモデルからの脱却を図る必要がありそうだ。
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