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最終話 中村誠32歳、選択の時Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(4/4 ページ)

新商品開発プロジェクトは、半年間の成果を役員に報告し、一区切りつくことになった。しかし誠はあらためて自分の今後を考えることになる。製品の販売立ち上げまでプロジェクトを見届けるのか、それとも……。

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 えっ? どうしてそれを知ってるの?

美咲 だって、報告会の直後に小石川社長が人事部長と部屋に残って話しているのが偶然聞こえてしまって。「今度中村君をI2プロジェクト推進室の特命係長にするつもりだ」って、そうおっしゃってましたよ。

 そういうことだったのか……。

 たわいない美咲との会話から思わぬ情報を聞き出してしまい、誠の頭の中に、“困難”の2文字がまたしてもぐるぐると回りはじめた。

 僕はいったい、どういう仕事で会社に貢献したいんだろう。以前、師匠が言っていたように、僕は本当にコンサルタント職に向いているのだろうか?

東山 そこの二人、いつまでそこにいるつもりなんだ?もうすぐ乾杯するから、こっちにグラスを取りにきなさい。

誠&美咲 すみませーん。

 美咲と一緒にグラスを取りにいった誠の胸中には、漠然とではあったがある1つの決断があった。

 今回のプロジェクトは、僕がリーダーとして成長するための大きな足がかりとなったし、これからもっと多くのプロジェクトを経験してみたい。そのためには……。

 その決断を胸に、誠は社長の真意を直接確かめようと小石川たちのいる方に向かってまっすぐに歩いていったのだった。(終)

星野仙八のアドバイス:「プロジェクト終了に際し、リーダーがやるべきこととは?」

 プロジェクトをきちんと終わらせるために、リーダーがやるべきことには、次の3段階があります。

(1)プロジェクト終了を明らかにする

 まず、プロジェクトの終了を内外に明確にすることです。そのためには「どの時点をもってプロジェクトチームから手離れするか」を合意し、周囲の理解を得る必要があります。その上でプロジェクトを現場へ引き継ぎます。

 本文中でも紹介したとおり、プロジェクトで決まった仕事のルールややり方は、現場で継続して実施されてこそ、現実の成果を生み出します。どんなにいいアイディアでも、実際に使われないままお蔵入りになってしまってはもったいないですし、リーダーとしてはとても残念に思うことでしょう。

(2)成功しても失敗しても、必ず反省会を開く

 次にプロジェクトオーナーやチームメンバーといった活動関係者の意見集約や貢献評価を行うことになります。当初のオーナーの期待に対してどこまで応えられたのか、またチームとしての強みや反省点は何だったかをとりまとめる反省会を開くことが有効です。

 仮にプロジェクトが失敗に終わってしまった場合でも、うやむやには終わらせずに反省会を開いた上で、きちんとけじめをつけましょう。もちろん失敗はしたくてするわけではありませんが、「失敗を成功の母」として失敗体験から学ぶ姿勢を持つことが、リーダーとしてのさらなる成長機会をもたらすはずです。

(3)プロジェクトで得た知見を整理する

 上記の2段階を踏まえた上で、プロジェクト活動中に自分たちで考えた有用な仮説や分析結果などの取捨選択を行い、後々知見として活用できるように整理して社内に共有しましょう。プロジェクトから得たさまざまな知見を個人個人の属人的な暗黙知(※)だけに留めず、今後の自分たちの業務に生かせるように展開していく必要があります。

 リーダーとしてプロジェクトの成果を社内に定着させるという責任を果たすためにも、単に終わらせるだけではなく、次のプロジェクトに生かせる仕組みを作っていくことも大切なことです。

※暗黙知…明確には言葉に表しにくいが、非常に重要な創造的知識のことをいう。反対語として「形式知」をよく用いる。


Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」は、今号をもって終了いたします。ご愛読くださり、ありがとうございました。(著者&編集部)

登場人物紹介

  1. 中村誠(主人公、プロジェクトリーダー):入社10年目の商品企画室主任。リーダーにアサインされるもどううまく進めていけばいいのか、戸惑いも悩みも尽きない32歳独身。
  2. 東山貞治(プロジェクトオーナー):製造部長。温和で若手社員の面倒見がいい上司。誠が水戸工場勤務時代には工場長だったので大変お世話になった。
  3. 小栗順(プロジェクトメンバー):購買部員。誠と同期入社だが、昔からそりがあわない。
  4. 仲居貴一(プロジェクトメンバー):製造部員。誠の1つ上の先輩で職人肌タイプ。水戸工場時代、彼からモノづくりのイロハをきっちりと指導をされた。
  5. 山口勉(プロジェクトメンバー):商品販売部員。誠の4つ下の後輩で、数字に強い。
  6. 浜崎しほ(プロジェクトメンバー):広報部市場調査室員。誠の3つ下の後輩で既婚。頭が切れるタイプだが、リーダー初心者の誠を応援してくれている。
  7. 坂口賢二(プロジェクトメンバー):飲料開発部員。誠の同期で新入社員時代、同じ部で苦労した経験を共有している。
  8. 小石川登:アイティフーズの3代目社長。アイティ食品グループ本社の役員も兼務する。
  9. 星野仙八(経営コンサルタント):経営コンサルティング会社JNEX(ジェイネックス)のパートナー。アイティ食品グループで進めるI2プロジェクトを主導しているベテランコンサルタント。
  10. 後藤美咲:広報部社内広報室員。誠の5つ下の後輩で、癒し系。社内報取材を通じて、誠といい感じに……?
  11. 橋下悟(経営コンサルタント):JNEXのコンサルタント。誠と同い年だが、コンサルティング歴10年の逸材。EQ(エモーショナルクオリティ)のプロファイラー資格を有する。

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