乗り捨て自由! ドイツのユニークなレンタサイクルシステム:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
自転車の利用が日本と同じくらい盛んなドイツ。レンタサイクルもよく利用されているが、ドイツ鉄道のレンタサイクルはどこで自転車を乗り捨ててもいいという画期的なシステムを採用しているのだ。
乗り捨て自由
このように、区域内ならばレンタサイクルをどこに置いてもいい、いわば乗り捨て自由な仕組みは極めて画期的だ。逆に、レンタサイクルが散らばり過ぎると管理の手間は増えるものの、利用者の使い勝手が良くなるとして会社としては歓迎している。
DBレンタル有限会社はCall-a-Bikeを運営する都市に管理事務所を置いており、レンタサイクルの故障・不具合は利用者からの連絡で把握するか、作業員の巡回で見つける。フランクフルト地域の場合、(人数は季節にもよるが)5人程度の作業員が巡回し、問題のあるレンタサイクルを回収、整備センターで修理する。フランクフルトのセンター長ラルフ・ヴィン氏によれば1日およそ10台程度が整備センターに持ち込まれるそうだ。
Call-a-Bikeは2000年のミュンヘン(運用台数1500台)を皮切りに、2002年ベルリン(1700台)、2003年フランクフルト(650台)、2004年ケルン(800台)、2006年シュトュットガルト(400台)、2007年カールスルーエ(350台)と、大きめの都市を中心に営業地域を拡大してきた。
登録者は約4万5000名を超え、1人当たり年間平均10回利用している。申し込み時に若干の手数料はかかるが月々の基本料金はなく、利用料金はすべて利用した時間で計算される。1分当たり0.08ユーロ(ドイツ鉄道の割引カード所持者は0.06ユーロ)なので、1時間使用すれば4.8〜6.4ユーロ。これに携帯電話の通話料金がかかる。
登録者数・利用回数とも毎年増加しているが、無人ステーション型と同様Call-a-Bikeもまた収益性の高い事業とは言い難く、あくまで鉄道事業に付加するサービスとして位置づけているようだ。また現在の料金設定では自治体からの補助金が不可欠で、今後、営業都市を増やせるかどうかは自治体の要望次第となる。
レンタサイクルのポテンシャルは未知数であるが、ヨーロッパ各地を旅行していると、もっと手軽にレンタサイクルを利用できたら……と思う場面がたいへん多い。1人の旅行者として今後のレンタサイクル事業の広がりを大いに期待したい。
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