1つのサッカーボールから――Football For All People:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
デニム地を縫い込んだサッカーボール、エヴァンゲリオン調の柄のサッカーボールなどをデザインした株式会社imio(イミオ)。人生をサッカーにかけているimio倉林啓士郎社長の思いを沼田健彦広報ディレクターから聞いた。
風はアゲンストからフォローへ
1998年ころからフットサルが社会人の気軽なスポーツとして浸透し始めていたことが、倉林さんにとっては追い風となった。サッカービジネスは大手のスポーツメーカーがガチガチにおさえているが、フットサルは新しい市場なので食い込む余地がある。また、フェアトレードについても考えた。パキスタンでは「手縫いのサッカーボールは1日3〜4個しか作れないが、報酬は1個わずか120円」という現実がある。そこで、“スマイルボール”を作り、収益を適正化して社会貢献しようと考えた。
スマイルボールは試合球として売るのではなく、デザイングッズとして売り出すことにし、箱をデザインしてインテリアショップに卸した。すると、「面白いじゃないか」と松屋銀座などにも取り扱いが広がった。そして、「静岡発! ランデヴープロジェクト」への企画協力をきっかけに、「グローバル・トレーディング」という社名を「imio」に改名した。単なる卸業から、「商品に意味を持たせること=imio」に変わる意思を示したかったからだ。時は2006年4月、第2の創業だった。
そのころ倉林さんの事業は、“パス交換”ができる2人になった。静岡発! ランデヴープロジェクトの仕事をするために、インテリア業の経験者である小林さんにコンタクトしようと電話をかけたのだが、間違えて高校サッカー部の同期生の小林さんにかけてしまった。コバヤシ違いだ。だが倉林さんは、「最近こんなことやってるけど、手伝わない?」と京都大学大学院で化学を研究していた小林さんをくどいてしまった。どういう心境の変化があったのか、化学者だった小林さんは1週間後に上京して、インテリア企画者に化けることとなる。
倉持さんの仕事の役割はいわば司令塔のMF、スポーツ・家具・雑貨の各事業を担当する小林さんがFW、経理・管理のDFも加わった。サイドから前線に駆け上がるのは広報の沼田さん。彼は元電通のPRマンで「ウチに来ない?」と倉林さんに“タックル”されたのだ。
中田英寿さんともつながる想い
「ちょっと意地悪いかな?」と思いつつ、「中田英寿さんが始めたサッカーボールからの社会支援『TAKE ACTION FOUNDATION』をどう思いますか?」と聞いてみた。すると驚くべきことに、中田さんから倉林さんに「フェアトレードに興味があるので、一緒にパキスタンを旅しませんか?」と誘いがあったという。誘いがあった2007年秋当時、中田さんはまだ旅の途中。だが、ホテルまで予約したものの、現地でクーデターが起きたためにキャンセルとなった。
倉林さんはサッカーボールにプレーだけでなく、インテリアやデザイン、社会貢献、フェアトレードの意味も持たせた。当たられても倒されても起きあがってきたのは、“Football For All People”の想いがあったからだろう。
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