金融不況の影響で非正規労働者との契約延長を停止したり、希望退職を募る企業が増加しているが、優秀な人材を求めるためのヘッドハンティングの状況はどうなっているのだろうか。
人材スカウト会社のサーチファーム・ジャパンの調査によると、同社での2009年2月のヘッドハンティング1案件あたりの候補者※数(平均)は44.38人。2008年8月までは40人台後半だったが、9月のリーマンショック以降急減、しかし10月の42.96人を底として回復傾向にある。
※候補者……クライアント(企業)から依頼されたポジションに対し、リストアップした人材の中で転職の意思があると確認できた人材。
「ヘッドハンティング市場ではリーマンショック後も案件は増加傾向、また候補者数も増加傾向にあるが、案件の増加に対し、候補者数の増加が追いつかなくなり1案件あたりの平均候補者数が減少している。不況下で人材流動化が活発になっているが、ヘッドハンティングの対象者では転職を控える傾向が発生しており、数値の減少につながったと考えられる」(サーチファーム・ジャパン)
金融系、メーカー系の問い合わせ減少。サービス系、流通・小売系は増加
業種別の問い合わせ割合を見ると、2008年10月以降は金融系の問い合わせがなくなり、2008年12月以降はメーカー系の問い合わせも減少している。代わりに増加しているのは、サービス系、流通・小売系など。数としては減少しているがメーカー系では、環境系R&D分野での技術者の需要は増加。サービス系ではフードサービス、医療サービス、教育などの分野が多い。医療サービスでは製薬業界における2010年問題※に向けた需要が増加。流通・小売系は主に地方が増加しており、ドラッグストアからの問い合わせが多いという。
※2010年問題……2010年前後に多くの大型医薬品の特許が切れることが各メーカーの収益に影響をもたらすと懸念されている問題。
関連記事
- 山崎元の時事日想:本当に転職に有利なのか? 日本の社会人大学院事情
不景気になると、キャリアアップや転職を目指すため「社会人大学院」を希望する人が増えるという。多くの大学では社会人でも単位が取得できるようなカリキュラムとなっているが、本当に社会人大学院を卒業すれば転職に有利なのだろうか? - かつて「前向きな自己実現」だった転職……今や“させられる”ものに
ある調査によると、「終身雇用は良い」と思う人が増えているという。世界的な不況の影響を受け、“安定”を望む人が増えているようだが、現実は「希望退職」や「退職勧奨」により難しくなりつつある。 - 転職者の不満はやっぱりアレ
厚生労働省の調査では、情報通信業への転職者は14産業中10番目だった。転職の満足度では「仕事の内容」がトップ、それでは不満は……?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.