北米市場を制覇するKUMON――「一人勝ち」の仕組み(2/2 ページ)
北米生徒数目下25万人。300万人への拡張も夢ではないといわれる教育系フランチャイズの雄、KUMON(公文)。競合他社の追随を許さないその強さの秘密に迫った。
KUMONの強みとは
KUMONのメソッドは「繰り返しによるスキルの向上」という考え方に基づいていますが、これが「discipline(しつけ)」を重んじるアジア系移民の価値観に訴えていることも、KUMONのこれまでの成功要因の1つであると言えるでしょう。日本人である我々は、「学習ドリル」を見慣れて育っていますから、KUMONの教材を見てもあまり目新しい感じはしませんが、米国の一般の教育現場では、「繰り返すことによって覚える」というのはあまり見られないやり方です。アジア系移民である親たちは、米国の学校では得られないこういった学習法を、KUMONに求めていると言えるでしょう。
KUMONの生徒は1週間に2度、KUMONの教室に行き、1回30分のドリル演習をします。また、毎日10分から30分ほど、自宅で自己学習することが奨励されているようです。「単に学問を学ばせるだけでなく、辛抱強さや粘り強さなど人格形成にも貢献する。それがKUMONの素晴らしさだ」などという声も聞かれます。
アジア系移民の価値観や、「満たされないニーズ」に注目して成長してきたKUMONのビジネスですが、最近ではその教材が米国の公立校でも活用され始め、米国の主流社会への浸透の兆しも感じられます。平均的にみて、アジア系米国人は教育水準の高さでも知られていますから、「お宅のお子さん、ずいぶん成績がいいけど、どうやって勉強しているの?」などとお母様同士の会話を通じてKUMONのブランド認知が広まっているとも想像できます。
Sushi(寿司)にしても、私が米国で社会人生活を始めた1970年代後半には、日本人やアジア系住民を主な対象としたごくニッチな食べ物でした。それが今日では、普通のスーパーでもSushiが買えるようになり、「Sushiを食べたことのない人」を見つける方が難しいくらいの時代になっています。KUMONも今後、Sushiと同様とまではいかないまでも、米国の一般社会の中に広く受け入れられていくのではないか、と私は推測します。
北米におけるKUMONの市場潜在性は現在の10倍、生徒数も300万人程度まで拡張可能なのでは、とも言われています。北米市場への進出というと、どうしても「米国全般」を対象として考えがちですが、KUMONの事例は「日本人」や「アジア系」といった限られた層に照準を合わせたビジネスでも充分事業として成立する可能性があり、そこを出発点として、もっと大きな市場へと拡張していくチャンスがあるのだ、ということを立証するものだと思います(石塚しのぶ)
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