『週刊プレイボーイ』を悩ませていること……それは?:集中連載・“週刊誌サミット”(2/2 ページ)
2009年の1月号で休刊した『月刊プレイボーイ』。集英社の『週刊プレイボーイ』と直接関係はないが、部数は減少傾向にあり、厳しい状況に変わりはない。「『週プレ』は“カネ食い虫”」という、樋口編集長に今度の方針などを聞いた。
ヌードは1冊20ページまで
さきほど佐野さんは「雑誌というのは編集者や出版社のものではなくて、読者のものだ」と言っていた。確かにその通りで、「雑誌がなくなれば、読者が知りえるはずの情報が届かない」。このことをもっと考えていかなければならないと思う。
『週刊プレイボーイ』の場合、東京都「青少年健全育成条例」(条例)のヌード規制が立ちはだかっている。(条例の)いわゆる“わいせつ性”について裁判で争っても、非常に難しい争点になるだろう。
例えば、(条例に)週刊誌のヌードが1冊20ページを超えてはいけないというのがある。しかし「なぜ20ページなんだ?」という疑問がある。『週刊プレイボーイ』では発売される号によって、ヌードのページ数が違う。雑誌の総ページ数に対するヌードのページ規制であれば理解できるが、「(1冊につき)20ページを超えてはいけない」という勧告があった。
この勧告について、単なる脅しかというとそうではない。例えば『アサヒ芸能』の方が東京都庁に呼ばれ、「この内容のままではコンビニで置かせませんよ」というような指導があった。「1冊20ページに根拠があるのか」という点で争うべきなのかもしれないが、唯々諾々と「20ページか……」と思っている自分がやや情けない。
フェアプレーはまだ早い。時期尚早
先日、評論家の佐高信さんが、集英社の新入社員向けに講演を行った。その時に佐高さんが「ジャーナリズムの危機と可能性」というテーマで話された。最初、佐高さんには「雑誌ジャーナリズムの危機」について話をしてくれませんか? と提案した。すると佐高さんは「分かった。だけど『可能性』を付けよう」と言ってくれた。
その講演の中で佐高さんは、魯迅の言葉を紹介していた。「フェアプレーはまだ早い。時期尚早」と。どういう意味かというと、大きな敵と戦うとき、こちら側がフェアプレーでいこうという姿勢は勇ましくていいこと。しかしそれで勝てるかというと、まず負ける。だからフェアプレーを志すのはいいことだが、まだそれには早いのだ、ということ。つまり週刊誌もその姿勢で、“権力”を監視していかなければならない、と思っている。
最近、若い編集者の方が毒のあるテーマを出してくれている。(ベテランの編集者は)危ないものや面倒なテーマはついつい抑えてしまう傾向があり、反省している。これからは雑誌を面白くしていくつもりなので、大いに期待してほしい。
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