週刊誌は“本丸”を突いているのか? タブーに挑戦しない体質(後編):“週刊誌サミット”番外編・元木昌彦氏に聞く(2/2 ページ)
「雑誌はタブーに挑戦する」と言われているが、「タブー」とは何だろうか? 『週刊現代』などで編集長を務めてきた元木氏は、「週刊誌は“本丸”を突いていない」と喝破。さらにタブーを破れば、週刊誌が生き残る道はあるという。
総合週刊誌は金属疲労を起こしている
――もし元木さんが雑誌を作るのであれば、どのような雑誌を作ってみたいですか?
今の総合週刊誌といった形は、“金属疲労”を起こしているのかもしれない。つまり賞味期限が切れかかっている感じだ。ただ週刊誌ジャーナリズムに特化するから「つまらない」というのではなく、面白くてためになるジャーナリズムを作っていかなければならないと思う。
総合週刊誌というのは日本が貧しかった時代に、1冊でいろいろなジャンルのものが掲載され、娯楽として優れた形を作ってきた。しかし今は総合週刊誌は、読者のニーズに合わなくなってきた。ジャーナリズムを扱うからといって難しいテーマばかりを追いかけるのではなく、例えば政治家のスキャンダルを追いかけることも立派なジャーナリズムだと思う。
なんでもかんでも取り上げるといった形より、もっと特化した方がいいのではないか。いろいろ取り上げれば内容が薄くなり、読者に「週刊誌ってこんなものか」と思われるかもしれない。信頼性を回復するためには、専門に特化した雑誌が良いのではないだろうか。
週刊誌の部数は減少したが、まだそれなりに影響力は持っている。新しい雑誌を作っても、20万部〜30万部を売ることは難しい。なので、今ある週刊誌を何とか消さないように頑張ってほしい。その中で次の時代に合うような、新しい形の雑誌を作り出す必要があるだろう。
編集長と読者……両者が話すことができる場を設けることも大切だと考えている。そうすることで読者は「この編集長……しっかりした考え方をしているな」「こういう考えで雑誌を作っているのか」と感じるかもしれない。しかし現在の状況は、編集部側が一方的に情報を流しているだけ。そして読者は書いたものを読むだけ。そうではなく、編集長はどんな顔をしていて、どんなことを考えているのか。読者はそういったことを考えながら、「週刊誌を読む」ことも必要ではないだろうか。
週刊誌の部数の推移(単位:万部、出典:週刊誌サミット資料)
雑誌名 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2005年 | 2008年 |
---|---|---|---|---|---|
週刊朝日 | 45 | 39 | 32 | 22 | 17 |
サンデー毎日 | 25 | 21 | 13 | 9 | 7 |
週刊アサヒ芸能 | 33 | 31 | 22 | 18 | 12 |
週刊新潮 | 54 | 53 | 52 | 52 | 44 |
週刊現代 | 56 | 73 | 65 | 50 | 26 |
週刊文春 | 63 | 68 | 64 | 58 | 51 |
週刊ポスト | 70 | 84 | 66 | 45 | 30 |
週刊大衆 | 23 | 26 | 36 | 24 | 21 |
週刊プレイボーイ | 68 | 51 | 42 | 34 | 22 |
SPA! | − | − | − | − | 11 |
元木昌彦氏のプロフィール
1945年11月24日生まれ、1966年早稲田大学商学部入学。1970年講談社に入社し、『FRIDAY』(1990年)と『週刊現代』(1992年)の編集長を務める。
2007年2月から2008年6月まで「オーマイニュース日本版」で編集長。現在は上智大学や法政大学などで、「編集学」の講師を務める。
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