なぜ巨大メディアは赤字に陥ったのか? 真犯人はこの男たち:新連載スタート! 相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
リーマンショック以降、一般企業だけではなく巨大メディアも赤字に陥った。原因については、不況に伴う広告収入の落ち込みやネットの台頭による販売不振が直撃したと言われている。しかし赤字に陥った背景には、業界特有の“病根”があるのではないだろうか?
経営のアウトソーシングを
「この際、経営をアウトソーシングしたらどうか? このまま素人が経営を続ければ業績回復は到底望めない」――。
数年前、筆者が在籍した会社の労使交渉で、組合幹部が経営陣に舌鋒鋭く迫る場面があった。世界的な不況が起こる以前から経営のプロ不在を危ぶむ声はマスコミ内部に沈殿していた。だが、言論や編集権を冒されるのを嫌い、筆者の古巣や他のメディアが大胆な経営のアウトソーシングに踏み切った例はない。
現状、外部のコンサルやアドバイザーを招き入れ、経営再建に向けた地ならしを開始したメディアは多いが「アリバイ工作的な内容ばかりで、とても実効性があるとは思えない」(大手紙記者)との声が支配的。素人のトップたちは、米国や欧州で大手メディアが次々と消え行く状況から目を逸らし、周囲の嵐が止むのをただ待っているだけなのだ。
現状、筆者のもとには新聞や出版社の合併・買収(M&A)に絡(から)む噂や、地デジ対応で財政難に直面する地方テレビ局の窮状ばかりが伝わってくる。元来、規制に守られ数が多過ぎたマスコミ界。未曾有(みぞう)の不況とともに、経営の素人たちが右往左往する姿が浮かび上がる。
信用調査会社・帝国データバンクは毎年、個別産業ごとの業況天気図を発表している。2009年度の「出版・新聞」の天気は「雨」。同社は「不況で単行本の売れ行きに不透明感。雑誌は立て直しが急務に。コンビニルート不振で取次店の再編が現実味」と分析する。「放送」は「小雨」。「危機的状況を迎え、民放キー局各社は、経費の削減と放送外収入へシフトするが、苦戦が予想される」とある。今年度の業況は、大多数の業界で雨模様となっているが、経営のプロたちが主導すれば、必ずや「晴れ」の業界が増えるはずだ。ただ、マスコミ界については、筆者は“長雨”、あるいは“雷雨”が続くとみる。
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