人気はずっとモチモチ?――白いたい焼きブームの内側:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
密かに人気を集めている“白い”たい焼き。その魅力はどこにあるのだろうか、白いたい焼き屋を営む深山智利主さんに話を聞いた。
立地の妙味
深山さんが最初に出店したのはJR中野駅南口である。だが、北口には別の白いたい焼き屋が先行出店していた。「さすがに同じ駅に2店舗はキツい」と思った。しかし、南口から住宅街に向かう細い道に商機を感じた。
その道は一見、線路際の裏通りに過ぎない。だがその先の住宅街との境にホームセンターの島忠があり、途中には多目的ホール「なかのZERO」がある。若者も中高年も集う、平日も土日も人通りが絶えない裏通りなのだ。事実、それを見込んで出店した花屋さんが繁盛していた。「ここだ!」とひらめいた深山さん、前はブティックだった花屋の隣の空き店舗に出店することを決めた。結果は大繁盛。
平和台店の立地にも妙がある。東京メトロ平和台駅出口付近は環八通りで渋滞、さらに住宅街からの自転車通勤で駐輪場も大混雑している。クルマも人も渋滞する場所なのだ。そこから200メートル離れた住宅街への入口なので、普通に考えると余り良くない立地だ。
「混むのがかえっていいんです」と深山さん。
混めば人がたまる。たまればたい焼きをついで買いもする。そんな読みがおもしろい。店頭でインタビューしていると、たい焼きを買ったおばさんが、自転車に乗ろうとして雨がポツポツ。「着させてくださいな」と言って、店頭で雨合羽を着始めた。のどかな店頭の一風景があった。
白いたい焼きは定着するの?
たい焼きは今年生誕百周年。また、「不況だと流行る」という話もある。店舗投資が少額で済むし、1個の単価が安くて買いやすいからだ。タイのどこかユーモラスな顔つきも、不況で沈みがちな心を癒やしてくれる。だから「流行りに乗って売り逃げ」という経営者もいるだろう。
だが、たい焼きにほれた深山さん、“FC店の分際で”本部に新味の提案までする。流行りで終わらせるか、あるいは味や立地に知恵を出して継続した需要を開拓するか。商売人としてはどちらもありだが、たい焼きが100年続いたのは時代によってお客さまを向いて事業や味を変えてきたからこそ。それができれば一番いいだろう。
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