企業は性格で人を採用するべきか?(2/2 ページ)
適性検査と称して性格検査を実施している企業が多くあります。なぜ企業は性格を知りたがるのでしょうか? 性格の問題ととらえているような部分は、実は別の検査を実施しなくてはならないのではないでしょうか。
それは本当に性格の問題か?
「性格が悪い」といいますが、本当にそれは性格の問題でしょうか? 性格という言葉が曖昧にそして便利に使われています。もし、人材採用が性格で判断されるとしたら、生まれた時から人生が決まっているようなもので、親を恨むしかなくなります。性格の問題と呼ばれているものの多くが、感情能力の問題と言い換えることができます。
例えば「キレやすい」という言葉があります。これは性格ではありません。「キレやすい性格」という言葉はありますが、キレやすい行動は治るので「治らない性格ではない」のです。キレてしまうのは感情能力の問題です。どこかその人なりに、キレるに至った動機(センサー)があるはずです。そのセンサーがたくさんあって敏感であれば、すぐに怒りMAXに達してキレるという行動に表れるのでしょう。
また「頼まれると断れない性格」という言葉もあります。人から物事を頼まれると断れなくて、ついつい抱え込んで爆発をしてしまう人がいます。でも、頼まれたことを断るには、技術も必要です。性格的なものがまったく含まれないわけではありませんが、頼まれても断ることは訓練でできます。ですから、これも性格ではありません。
「性格は変わらないもの」という認識は一般的ですが、ほとんどのものは感情であり常に変化します。常に変化している感情ですから、行動を変えていくことによって感情の表れ方もどんどん変化していきます。 感情の状態が習慣化され、常に同じ反応をしてしまうようになってくると性格と呼ばれてしまうこともあります。
企業が測るべき検査とは
人材を採用する人は、どんな人を採用したいのでしょうか? いつ表れるかも分からないその人の見えない部分の性格を知ることが重要でしょうか? 深い部分を知りたいのであれば、前世検査とか背後霊検査とか、占いなどをアテにするほうがあきらめもつきます。
採用担当が測るべきものの1つに、感情の使い方(感情能力)が適切に行える人か? ということがあるのではないでしょうか。感情の調整能力が高い人を選ぶという基準は、性格検査を実施したい企業のある部分のニーズを満たすことができるでしょう。キレる人、我慢できずすぐに辞める人、空気が読めない人……。自分の感情のままに動き、コントロールできない人は、こうした問題で自分自身が苦しんでいます。
また逆に、感情が全く動かない人もそれはそれで問題かもしれません。人と共感できない、人の話が聞けない、成果や喜びを共有できない……。何を言っても白けていて、なじめない人もやはり組織としてはうまく対応できません。
しかし、感情の調整能力がカンペキという人は、採用する側もすでにいる組織の人材でもほとんどいません。ですから、企業によって持っていてもらいたい感情は異なるはずです。感情に左右されず冷静な対応を心がける人、相手の感情をキャッチしうまく感情で働きかける人、こういう人はどんな企業でも必ず必要とされる人材です。
感情は開発できる能力であり、人間の脳の特徴は先天3割、後天7割と言われています。私たちが性格と呼んでいる部分も、気質に影響される部分があるにせよ、それが全体を占めるわけではありません。日常生活の中で育まれた感情があり、行動によってそれが伝わります。
これからの時代は、いつ表れるか分からない性格より、行動に結びつけることができる感情を測るほうが適切なのかもしれません。
→中島康滋氏のバックナンバー
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