アサヒビールの“目利き”調査(2/2 ページ)
アサヒビールではビール系の新製品を出す際に、感度の高い消費者を対象とした調査を必ずやることになっているという。無作為抽出した消費者を対象とした調査との違いは何なのだろうか。
プロの消費者たち
目利きの人たちは、商品カテゴリーに関わらず買い物好き、新製品好き。つまり、豊富な消費経験を持っていることに加えて、当該商品カテゴリー(例えばビール系飲料)に詳しく、単に「自分なら買う」という主観的な判断だけでなく、「自分は買わないけど、大衆には受け入れられるだろう」といった客観的な判断ができる人たちだと、清水氏は指摘しています。
なるほど……、目利きな人たちとは的確な批評眼を持つ“プロの消費者”とでも呼べる方々ですね。
考えてみれば、従来の新商品に対する消費者調査は、基本的に無作為抽出した消費者を対象として調査を行ってきましたが、その予測精度や信頼性は必ずしも高いものではありませんでした。
おそらく、こうした調査の予測精度や信頼性が高くなかった理由としては、調査対象者に、よく考えず、衝動的な理由で買ったり、漠然と購入してしまったりする“アマチュアの消費者”が多く含まれていたからではないかと私は考えています。
アマチュアの消費者は、十分な評価能力を持たないため、たとえ新商品を見たり、また実際に試してみたりしたとしても、感覚的判断や思いつきだけで商品評価をしてしまうのです。そして、「買いたい」と調査では答えておきながら、発売後に購入することはほとんどしない……。
ところが、プロの消費者は新商品のコンセプト、ネーミング、パッケージングなどさまざまな視点から的確に良し悪しを判断し、大衆に受け入れられるかどうかを総合的に評価できる力を持っている。
アサヒビールの「目利き調査」では、こうしたプロの消費者に絞って組織化することで、新製品需要調査の予測精度、信頼性を高めることに成功したと言えますね。(松尾順)
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