2010年は「カーシェアリング元年」になるか:神尾寿の時事日想(3/3 ページ)
環境意識の高まりと、クルマの利用ニーズの多様化。これらを受けて、クルマや自転車のシェアリングサービスが活発化してきている。カーシェアリングは新たなクルマ利用スタイルとして、どこまで広がっているのか。そして、カーシェアリングの周辺ビジネスはどこまで拡大するのか。各社の取り組みを見ていこう。
カーシェアリングの広がりは、IT業界としても注目
カーシェアリングの増加は、IT業界を中心に新たなビジネスやサービスの市場を作る効果もある。
まず、すでに動き出している市場として挙げられるのが、車載器と通信モジュール、動態管理用テレマティクスシステムなどだ。
カーシェアリングは、会員の認証や利用予約管理をサーバー側で実施、クルマの管理はモバイル通信経由で行うことで、貸出ステーションの無人化を実現している。そのためカーシェアリング用のクルマには、GPSとモバイル通信モジュールを組み合わせた車載器が搭載されており、現在地や車両の状態、利用状況などがサーバーで把握・管理されている。カーシェアリングの実現には、この動態管理のためのテレマティクスシステムが必須なのだ。
オリックス自動車やパーク24など、すでにカーシェアリング事業に参入している事業者は、動態管理システムを構築している。しかし、今後、カーシェアリング用の車両が増えれば、車載器と通信モジュールは台数が増えるごとに必要になる。
また最近のトレンドでは、ガソリンスタンドや中古車販売業者、自治体などが副業でカーシェアリングサービスに乗り出すケースも増え始めている。例えば、昭和シェル石油は2009年12月からカーシェアリングサービス「まちのりくん」の実証実験を実施中だ。こうした事業者は車載器も含めた動態管理システムをアウトソーシングするケースが多く、これらはIT業界の新たなビジネス領域として注目されるだろう。
ほかにも、カーシェアリングの一般普及が進めば、搭載カーナビに“個人のデータが保存できない”といった使い勝手の悪さも、ユーザーの不満として生じてくるだろう。通信型カーナビやナビ連携型のクラウドサービスにとっても、カーシェアリングは相性がいい。クルマ利用型サービスであるカーシェアリングは、さまざまな形でITの周辺ビジネスやサービスとの連携が考えられるのだ。
2010年はカーシェアリング元年
日本におけるカーシェアリングは、まだ普及拡大期に入ったばかりであり、利用者数でみるとそれほど多くない。しかし、2009年後半から貸出ステーション数は急増しており、利用環境の整備が進んできている。とりわけマンション敷地内駐車場の有効活用や、コインパーキング活用による貸出ステーション増加は、今年大きく進むだろう。これら貸出ステーション増加に伴い、各事業者の会員獲得キャンペーンも積極化。例えば、先述のカーシェア24では、2010年1月から3月末まで、会員の月額基本料を無料にする「月額無料キャンペーン」を実施している。
電車・地下鉄・バス網が発達している都市部を中心に、「クルマがなくても生活できる」「クルマはいらない」という声をよく聞くようになった。しかし、時と場合によってはクルマがあった方が便利であり、都市部では「クルマの購入・維持費と、利用頻度が釣り合わない。コストパフォーマンスが悪い」というのが実際のところだろう。カーシェアリングは、こうしたクルマを取りまく環境やユーザーの意識の変化を受けて、今後さらに普及拡大するだろう。
2010年は、カーシェアリングが新たな都市交通手段の1つとして定着していく年になりそうだ。
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