一人勝ちアウディのブランディング戦略(3/3 ページ)
アウディの勢いが止まらない。日本で初めて輸入車シェア10%を突破し、3月の世界販売台数は月間記録を達成するなど、破竹の勢いを続けるアウディ。その徹底したブランディング戦略を探る。
社員がブランドを深く理解する
日本で行われるキャンペーンでもプレミアム感は徹底される。4月8日から実施されている「アウディ プレミアム カーシェアリング」という試乗モニター募集でも、「泉ガーデン」という富裕層が集うプレミアムな場所で、「Vorsprung mail」と名づけられたメールマガジン購読者に絞って展開される(メルマガ購読者に絞るという点もロイヤリティをくすぐる)。「Vorsprung」とは先進性を表すアウディのブランディングで、すべてのユーザー接点にこのコンセプトが用いられる。
環境戦略も先進的だ。2008年から「カーボンオフセットプログラム」という自動車メーカーでは非常に高度で独自の取り組みを車種を限定して行ってきたが、同様の取り組みを4月から全車で展開する。環境意識に関しても、グレードの高い本物志向の顧客がターゲットだ。
そして、アウディの優位性は、社内での活動にも現れている。ブランディングや企業理念は、ともすると抽象的で中途半端な展開に終わることが少なくないが、アウディジャパンでは、年に3回全員参加でこの「Vorsprung」について徹底的に考える日が設けられているという。自分の役割におけるこのブランドの意味、具体的な価値について議論を重ねることで、全員がどの立場においてもこのブランドについて顧客に自分の言葉で伝えることができるようになるのだ。
私はブランドの価値は社員の深い理解とコミットにこそあると思っている。イメージと実際の対応窓口とのギャップを「ブランドギャップ」として顧客は感じるのであって、そこで崩れたブランドイメージを復活させるのは極めて困難だ。
アウディの徹底的なターゲット戦略と、ブランド浸透の社内外の取り組みに学ぶ点は多い。(猪口真)
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