弱みは克服するな! ドラッカーが教える「人と組織の成長戦略」(2/2 ページ)
新年度が始まり、新しい職場や新しい役職・立場に異動した方も多いだろう。しかし、新しい人間関係がうまくいかず、十分に能力を出しきれていないと感じている人も多いのではないだろうか。特に部下を持つ人は、自身よりもメンバー個々人の能力を十分に引き出していけるかが死活問題である。
求められているのは新しい付加価値を創り出していく力とスピード
しかし、市場が成熟し、競争がグローバル化している現代、そして、そのような状態がさらに強まっていく今後においては、新しい付加価値を創り出していく力とスピードが求められていて、画一的な優秀人材の生み出す成果の総和よりも、多様性のある強みの掛け算による成果の創出の方が勝っていくこととなるだろう。
そもそも、自己の強みが何かでさえ、とらえきれていない人も多いのではないだろうか。強みを生かす場がなければ、強みを知ろうとする必要もないのかもしれない。ドラッカーは「誰もが自らの強みをよく知っていると思っている。しかし、たいていは間違いである。知っているのはせいぜい弱みについてである」と言っている。
強みを知ることが大事な出発点となるが、主観的な考察では誤った認識を持ってしまいがちだ。このため、客観的で、かつ定量的にとらえることができるサーベイのようなツールを使うことが有効である。強みを生かすということが行動するということであるから、コンピテンシーのような行動特性についてとらえることができるツールであればなお良い。
強みが把握できたら、強みを中心に人事を行い、その強みの発揮を求めることが重要である。ドラッカーは、「組織の役目は、人の強みを成果に結び付け、人の弱みを中和することにある」と言っている。人事は強みを発揮させるものでなければならないのである。そして、弱みを仕事や成果とは関係のない個人的な欠点にしてしまう組織を作るのである。要するに、弱みは克服するのではなく、弱みを意味のないものにするのである。
いくら有能な税理士であっても対人関係のスキルが劣っていれば、仕事を獲得することは難しい。しかし、組織の中にいて、対人関係を強みとするほかのメンバーが対応し、本質的な仕事の処理を有能な税理士が行えば、組織としての成果は飛躍的に上がっていくことであろう。先のドラッカーの言葉通り、組織が本来の機能を出し、人の強みを成果に結びつけ、人の弱みを中和したのである。
弱みを克服するな。意味のないものにせよ。そして、強みを知り、強みを生かせ。人と組織がともに成長できる確かな戦略である。(松本真治)
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