マイケル・J・フォックスから知った米国社会の現実――翻訳家 入江真佐子さん:あなたの隣のプロフェッショナル(4/4 ページ)
『ダイアナ妃の真実』やマイケル・J・フォックスの自叙伝『ラッキーマン』『いつも上を向いて』など数々のノンフィクションの翻訳を手がける入江真佐子さん。翻訳家という仕事の醍醐味、そして必要な資質とは?
好きだからやっていける
長年にわたって翻訳家として継続的に仕事してゆこうと思った場合、特にどんなことが必要になるのだろうか?
「1冊の本を翻訳するのに要する時間は、私の場合、特に急ぎでないときは、1カ月あたり原書100ページが目安です。ですから、たとえば300ページの本なら、ざっと訳すのに3カ月程度はかかります。それから推敲し、修正を加えて原稿を確定させるまでにさらに1カ月くらいはかかります。今回の『いつも上を向いて 超楽観主義者の冒険』ですと、さきほど申し上げたような理由で、もっと多くの時間がかかっています。
それだけの労力を用いても、一般に、翻訳物は、初版の部数が概して少ないですし、滅多に増刷もされません。要するに、お金のことだけを考えるならば、ペイしにくいということです。翻訳だけで生活してゆくのは、なかなか大変です。『好きだからこそやっていける仕事』ということが言えるのではないでしょうか?」
入江さんは、これまでの翻訳家人生において、仕事を得ようと、自分から出版社に営業をかけたことはないという。若い頃から、自分の人生の方向性を的確に見出し、自然の流れの中で、無理なく、楽しみながらお仕事をされているようにお見受けする。この先も、きっと素晴らしい翻訳を世に出してくださることだろう。
まずは、最新作、マイケル・J・フォックスの『いつも上を向いて 超楽観主義者の冒険』の成功をお祈りしたい。
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。
主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
→Blog:嶋田淑之の“不変と革新”ブログ
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