“普天間”と“政治とカネ”の問題が政権を揺るがせた――鳩山首相、退陣表明演説:ほぼ全文(3/3 ページ)
鳩山由紀夫首相は6月2日、民主党の緊急両院議員総会で退陣を表明した。2009年秋の歴史的な政権交代から8カ月、鳩山氏はどのような思いのもと政権運営し、今後の政権にどのようなことを期待しているのか。退陣演説の詳細をお伝えする。
いつか分かっていただける
鳩山 みなさん、私はしばしば「宇宙人だ」と言われています。それは私なりに勝手に解釈すれば、「今の日本の姿ではなく、5年、10年、20年、何か先の姿を国民の皆さんに常に申し上げているから、何を言っているか分からんよ」、そのように国民のみなさんにあるいは映っているのではないかと、そのようにも思います。
例えば地域主権、原口(総務)大臣が先頭を切って走ってくれています。もともと、国が上で地域が下にあるなんて社会はおかしいんです。むしろ地域の方が主役になる日本にしていかなければならない。それがどう考えても国会議員や国の官僚がいばっていて、「くれてやるからありがたく思え」という中央集権の世の中、まだ変わっていませんでした。そこに少なくとも風穴が空いた。かなり大きな変化が今できつつある。
これからさらに一括交付金※など、強く実現を図っていけば、日本の政治は根底から変わります。地域のみなさんが思い通りの地域を作ることができる、そんな世の中に変えていけると思います。今すぐなかなか分からないかもしれません。しかし、5年、10年経てば、必ず国民のみなさん、「ああ、鳩山が言っていること、こういうことだったのか」、分かっていただける時が来ると確信しています。
新しい公共※もそうです。「官が独占している今までの仕事を、できる限り公を開く」ということをやろうじゃありませんか。みなさん方が主役になって、本当に国民が主役になる、そういう政治を、社会を作り上げることができる。まだ、なかなか「新しい公共という言葉自体が、なじみが薄くてよく分からん」、そう思われているかもしれません。ぜひ、きょう、お集まりの議員のみなさん、この思いを、これは正しいんだ。官僚の独占した社会ではなく、できるだけ民が、国民のみなさんができることは全部やりおおせるような社会に変えていく、そのお力を貸していただきたいと思います。
東アジアの共同体の話もそうです。今すぐという話ではありません。でも、必ずこの時代が来るんです。おかげさまで3日ほど前、済州島に行って、韓国の李明博大統領、中国の温家宝総理と、かなりとことん話し合ってまいりました。東アジア、われわれは1つだ。壁に「We are the one」、われわれは1つである。その標語が掲げられていました。そういう時代を作ろうじゃありませんか。
国境を越えて、お互いに国境というものを感じなくなるような、そんな世の中を作り上げていく。そこに初めて、新たな日本というものを取り戻すことができる。私はそのように思っています。国を開くこと。そのことの先に未来を開くことができる。私はそう確信しています。ぜひ、新しい民主党、新しい政権をみなさま方のお力によってお作りいただきたい。その時に今、鳩山が申していた、「どうも先の話だな」と思っていたことが必ずみなさんの連携の中で、「よし分かった」と理解していただける、国民のみなさんのお気持ちになっていけると私はそう確信しています。
お話が長くなりました。私は済州島に行って、1羽のヒヨドリが済州島のホテルに飛んできました。「そのヒヨドリはわが家から飛んできたヒヨドリかな」と、姿形が同じだからそのように勝手に解釈をして、そうか、この鳥も「早く、もうそろそろ自宅に戻ってこいよ」、そのことを招いているようにも感じたところです。
雨の日には雨の中を、風の日は風の中を、自然に歩けるような、苦しい時には雨天の友。お互いにそのことを理解し合いながら、しかし、その先に国民のみなさんの未来というものをしっかり見つめ合いながら、手を携えてこの国難とも言える時に、ぜひみなさん、耐えながら、そして国民との対話の中で、新しい時代をつかみ取っていこうではありませんか。今日はそのことを、みなさま方にお願いを申し上げながら、大変ふつつかな私でございましたけれども、今日まで8カ月あまり、みなさんとともに、その先頭に立って歩ませていただいたことに心から感謝を申し上げながら、私からの国民のみなさん、特にお集まりのみなさま方へのメッセージといたします。ご静聴ありがとうございました。
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